■イギリスのフォトグラファーでバンクシーの元エージェント、スティーブ・ラザリディスがバンクシーの写真集「BANKSY CAPTURED by STEVE LAZARIDES」(スティーブ・ラザリディスが捉えたバンクシー)をリリースしました。
■本記事では、「BANKSY CAPTURED」に掲載されているスティーブ・ラザリディスが捉えたバンクシー初期の写真と作品について解説します。
Contents
【Banksy Captured by Steve Lazarides】 とは
2019年12月にバンクシーの元エージェントでフォトグラファーのスティーブ・ラザリディスがリリースした待望の写真集「Banksy Captured」には、これまでのバンクシーの未公開写真や、ストリートアドベンチャーによる愉快な逸話が多数出てきます。
英国のストリートアーティスト、バンクシー初期の作品と活動に興味がある人にとっては必読書といえます。
スティーブ・ラザリディスが出版したバンクシーの写真集「Banksy captured by Steve Lazalides」についてはこちらの記事をご覧ください。
スティーブ・ラザリディスが「Banksy Captured Steve Lazarudes」のハードカバー限定版を出版
昨日、突如倉庫に現れた私の@Banksy ハードバック特別版!
スティーブ・ラザリディス、インスタグラム
出荷に夢中で一時的に「紛失」していました。
金曜日にはウェブサイトで公開する予定です。
スリップケース入りのハードカバー版は1000冊限定で125ポンドです。
現在、限定版はすでにSold Out (通常版3rdエディションは注文可能):Banksy Captured by Steve Lazarides

スティーブ・ラザリディスがドキュメンタリーに出演【Banksy And The Rise Of Outlaw Art】

【Banksy And The Rise Of Outlaw Art】(バンクシーとアウトロー芸術の台頭)とは
バンクシーの写真集を出版したフォトグラファーのスティーブ・ラザリディスは、2020年3月にリリースされたドキュメンタリー映画「Banksy And The Rise Of Outlaw art」(バンクシーとアウトロー芸術の台頭)でインタビューを受けています。
Banksy And The Rise Of Outlaw Art [DVD]このドキュメンタリーは、ストリートアートの伝説の中でもとりわけ「Pictures on Walls」のプリンターでアーティストのベン・アイネ(Ben Eine)によるバンクシーとのエピソードを特集しています。
こちらが「Banksy And The Rise Of outlaw Art」のトレーラーです。
【Banksy And The Rise Of Outlaw Art】
初公開: 2020年3月イギリス
監督: エリオ・エスパーニャ
映画脚本: エリオ・エスパーニャ
プロデューサー: エリオ・エスパーニャ、 トム・オーディル
108分
インタビューの人物は「Banksy」本人なのか?

上記「Banksy and the Rise of Outlaw Art」の予告編の中で、バンクシーの活動初期に撮影されたインタビュー映像のバンクシーの声は、2003年7月に行われた展覧会「ターフ・ウォー(Turf War)」の時に収録されたインタビューで、バンクシーとして紹介された人物の声に驚くほど似ています。
ターフ・ウォーで「ITV」のインタビューを行ったレポーターによると、この映像は2019年に世の中に出るまで、16年間も「ITV」のアーカイブで眠っていたと言います。
スティーブ・ラザリディスの写真集「BANKSY CAPTURED BY STEVE LAZALIDES 」には、ITVのインタビューでバンクシーとしてインタビューに答えている人物とほぼ一致するバンクシーの写真が掲載されています。

背景のネズミのステンシルは、バンクシーの著書「Wall and Piece」に掲載されているこちらの作品です。

ペンチを持ったかわいいネズミが錠をこじ開けようとしているようですが...
この箱には価値のない文書が入っています。
Banksy, Wall and Piece
作品の解説【Banksy Captured by Steve Lazarides 】によるバンクシーの写真
①GIRL WITH BALLOON TATE INSTALLATION
テイトインスタレーションの風船と女の子

バンクシーがフローティングガール(ヘリウムで満たされたダッチワイフでした!)に熱中した一連のインスタレーション。
どういうわけか、彼らの功績に値する注目を集めることはありませんでした。
STEVE LAZALIDES
派手な仮装をしてパフォーマンスを行ったバンクシーですが、どこまでも高く遠く飛んで行く赤い風船と空気人形は、ラザリディスが言うように成果に見合った大きな注目を集めることはなかった模様です。
ラザリディスが公開した写真の赤い風船には、「BANKSY」のロゴが見えますが、バンクシーの著書「Wall and Piece」では、マクドナルドの風船に変わっています。
この作品について、バンクシーはこんな言葉を残しました。
マクドナルドが子供たちをさらっていくよ。
Banksy, Wall and Piece



②GANGSTER GRANNIES
ギャングのおばあちゃん

この写真はロンドンのサウスバンクで撮影しました。
作品は、バンクシーによる「違法な屋外展示」の一部でした。
何度かこの作品を撮りに戻りましたが、幸運にも作品にふさわしい3人のOG(オリジナル・ギャングスター)たちのスナップを撮ることができました。
STEVE LAZALIDES
③ST. WERBURGHS
ワーバーグストリート

当時、ブリストルで何をしていたのかはわかりませんが、我々はプレス用にバンクシーのポートレートを撮影することになりました。
公正にみてまともな写真が1枚撮れましたが、残りはかなりひどかったです。
STEVE LAZALIDES
④HOUSE OF SIN
罪の家

バンクシーが、特に活発にこの地域を攻撃していた時期にサウスバンクで撮影。
あの頃、彼が一体どうやってここから立ち去り家に戻ったのかはわかりません。
STEVE LAZALIDES
背景に見えるのはロンドンを象徴する世界遺産の「ビッグベン」。
「ビッグベン」は国会議事堂の時計台として、イギリスで最も人気の高い観光スポット。
外国人旅行者であっても無料で内部を見られる上に白熱した議会の様子まで見学できるそうです。
そんなイギリスの宮殿に付随する「ビッグベン」に、ラザリディスは「罪の家」と名づけました。
写真を撮っている場合ではありません。
Banksy, Wall and Piece

バンクシーがあちこちに残した「This is not a photo opportunity」のステンシルで、観光客を揶揄すると同時に過剰なツーリズムに警笛を鳴らす姿勢は、2019年のベニスで行った路上パフォーマンスに受け継がれています。
⑤WILD STYLE CHASE
ワイルド・スタイル・チェイス

この写真は、2000年代初頭にイングランド南部で撮影されました。
どういう訳か、囲いから放たれた牧羊犬がペイントされた牛に不快感を示して怒り狂いました。
私はこのショットが大好きです。
STEVE LAZALIDES
バンクシーは家畜のボディーがよほど気に入ったのか、多数の家畜にペイントをほどこしています。
田舎のヒップポップ
もし地下鉄がない町で育ったら… 他に何か絵を描くものを 見つけなければならないのさ。
Banksy, Wall and Piece
バンクシーは家畜にペイントしたこれらの写真を、2003年にオーストラリアのシドニーで参加したイベントでも展示しています。




出典:全てBanksy – Wall and Piece
» バンクシー監督ドキュメンタリー”イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ(日本語字幕版)”はこちらです。
⑥BRIGHTON BURN OUT
焼け落ちたブライトン

これはバンクシーのブライトンでの作品です。
桟橋が焼けて間もなくブライトンで撮影しました。
私は桟橋が好きです。
この桟橋を記録することができてラッキーでした。
ショーの本当のスターは、カモメだと思いますが!
STEVE LAZALIDES
ブライトンは、ロンドンから電車で1時間ほどのところにある海辺のリゾート。
写真の背景には、ウエスト・ピアと呼ばれるヴィクトリア時代の桟橋が作る絶景が見えます。
ウエスト・ピアは海に突き出た娯楽施設の廃墟でしたが、2003年の火災でフレームを残して完全に焼失。
ステンシルされた可愛い女の子は中国人のように見えますが、手に持っているソフトクリームには花火が点いているのでしょうか。意味深ですね。
こちらにはショーの主役、かもめは写っていませんが...

出典:Banksy – Wall and Piece
⑦DRUNKEN ANGEL
酔いどれ天使

2000年代初頭、バンクシーはこの作品をサザーク(ロンドンの地区)にドロップしました。
アートワークだけでなくポジションとライティングも、私にとってお気に入りのバンクシー作品の一枚です。
「毎日この作品の前を通っていた夫が一年前に自殺した」という女性から連絡があり、作品に「慰められている」と言われたほろ苦い思い出があります。
STEVE LAZALIDES

⑧BLAIR’S FOLLY
ブレアの愚か者

2003年にロンドンで行われた反戦デモを撮影。
おそらくイギリス史上最大のデモです。
バンクシーは、プラカードの束を作り運の良い少数の人たちに渡しました。
これらのほとんどは、デモ行進が終わるとハイドパークに捨てられました。
STEVE LAZALIDES
バンクシーは2003年ロンドンの「イラク戦争に反対するデモ」のためにプラカードを作りましたが、路上に捨てられたり、警察に没収されたりして、オリジナルのものはほとんど残っていません。
バンクシーは、当時デモ行進に参加していたアーティストの友人や少数の人たちにこのダンボールを配りました。
その中には、マッシブアタックの3Dことロバート・デルナジャの姿もあります。
Robert Del Naja(Massive Attack) Damon Albarn (Blur2003)
出典:Massive Attack

出典:Massive Attack
ガラスの家に住んでいる人は石を投げてはならない。
Banksy, Wall and Piece
ガラスの街に住んでいる人はミサイルを撃ってはならない。
反戦デモ、2003年ロンドン
ロバート・デルナジャがプラカードを掲げて歩いているのがわかりますか? ヒントはサングラスです。

出典:BANKSY CAPTURED BY STEVE LAZALIDES

出典:Banksy And The Rise Of Outlaw Art

出典:Banksy – Wall and Piece
» 【気軽に飾れる】バンクシーが手掛けたBlurのアルバム「Think Tank」はこちらです。
⑨FUCK THE POLICE
ファック・ザ・ポリス

2000年代初頭に西ロンドンでバンクシーのポートレートを撮影しました。
私の中では間違いなくトップ10に入っています。
STEVE LAZALIDES
⑩SPRAY IT LOUD
スプレー・イット・ラウド

2000年代初頭にバンクシーのスタジオで撮影。
STEVE LAZALIDES
⑪BALLOON FIGHT
バルーン・ファイト

誰かがテキストの落書きをする数日前にバンクシーのこの作品を撮影しました。
フレームに足を踏み入れる勇敢な男が何かをつけ加えることで、アートワークがよりパワフルになるのを見るのは素晴らしいことです。
時がたつにつれて、この作品がますます多くの愛を集めているのを見ると、不思議な気持ちになります。
STEVE LAZALIDES
バンクシーは著書「Wall and Piece」で「赤い風船と少女」の作品にこんな言葉をそえています。
去る時は、騒がず静かに立ち去るんだ
Banksy, Wall and Piece

出典:Banksy – Wall and Piece
バンクシーは2018年にサザビーズのオークションで、のちにバンクシーの象徴となる「赤い風船と少女」を自ら仕掛けたシュレッダーで裁断しました。
2004年当時、どんな気持ちでこの作品を描いたのでしょうか。
本記事で使用したバンクシーの作品:
・Wall and Piece – Banksy (2005)
・Banksy Captured by Steve Lazarides (2019)
・Banksy And The Rise Of Outlaw Art (2020)
» バンクシー本人による作品集”Wall and Piece”【日本語版】 はこちらです。
最後に
いかがでしたか?
バンクシーの活動初期といえる2000年代前半の作品を、スティーブ・ラザリディスの「Banksy captured by Steve Lazarides」とバンクシー著「Wall and Piece」の二冊から抜粋して解説しました。
バンクシーの作品と、そこに添えられたキャッチーで皮肉のこめられた言葉を見ると、バンクシーは絵やステンシルだけではなくキャッチコピーと風刺の天才だということがあらためて分かりますね。
スティーブ・ラザリディスが写真に収めたバンクシーの「赤い風船と人形」の空飛ぶインスタレーションのように、バンクシーは活動初期から自分のメッセージをアートにのせて届けようと、人々の注目を集めることに熱心でした。
それは、今のバンクシーを作り上げた抜群のマーケティング力につながっているのかもしれません。
» ランキングに参加しています。よろしければクリックをお願いします。↓