■2019年9月、パリのポンピドゥーセンター敷地内にバンクシーが描いた「カッターに乗るネズミ」のステンシルが盗まれました。
■それから5ケ月後に起訴された男は、覆面アーティスト、バンクシー自身から犯行を指示されたと主張。
著名な覆面芸術家、バンクシーのステンシルが盗まれたのは2019年9月上旬のこと。
捜査の結果、32歳と35歳の容疑者を「バンクシーのネズミの窃盗容疑」で逮捕。
バンクシーは2018年6月、パリにあるヨーロッパ最大の現代美術館「ポンピドゥーセンター」の敷地にある駐車場パネルに、「覆面をしてカッターにまたがるネズミのステンシル」を描いていました。
Contents
「バンクシーのネズミ」が盗まれた
パリのポンピドゥーから消えた「バンクシーのネズミ」
2019年9月早朝、バンクシーの「カッターに乗ったネズミのステンシル」は、電動ノコギリでポンピドゥーセンター敷地内のパネルから切り離されました。
それから5か月後、調査の結果2人の男を拘留。
2月4日火曜日の朝、32才と35才の男が逮捕された場所は、パリ郊外のヴァルドワーズとセーヌエマルヌでした。
男たちからバンクシーの作品が押収されましたが、それらがオリジナルかコピーかはわかっておらず、ポンピドゥーセンターの近くから盗まれた「バンクシーのネズミ」のパネルは見つかりませんでした。
2月7日金曜日、最終的に容疑者の1人を「ストリート・ファニーチャー(電柱・道路標識・ごみ箱など)における文化財の窃盗容疑」で起訴。

「バンクシーのネズミ」盗んだ容疑者の供述
ル・パリジャン紙によると、事件は容疑者が「バンクシー自身から盗難を依頼された」と謎の自白をしたことで別の展開を見せます。
34歳の容疑者は、「バンクシーと知り合いだが報酬は貰っていない」と供述。
男は、去年1月にバタクランの非常口に描かれた別のバンクシー作品が盗まれた後で、バンクシーからの指示が具体化したと主張しています。
しかし、この反論はすぐに覆されました。
バンクシーが事件への関与を完全否定

バンクシーが「ル・パリジャン」紙にメールで反論
もし、バンクシーが電動ノコギリによる切断を実際に指示していた場合には(これはまだ証明されていません)、法律上、窃盗事件ではなくなります。
しかし、バンクシーは金曜日、フランスのメディア「ル・パリジャン」紙の編集部にメールを送り、「バンクシーの作品の盗難」への関与を完全に否定しました。
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弁護士の主張と争点
現段階では、クライアント(容疑者)の起訴は立証されていません。
容疑者の弁護士
財産の所有者が、自分で(自分のものを)盗むことはできないからです。
容疑者はアーティストの要請で介入しました。
犯罪者はいません。
その後、容疑者の弁護士の弁明により司法審査を通して容疑者釈放。
調査は続きますが、バンクシーは自分の作品が盗まれたことを訴えておらず、法廷にも現れないため事件の解決は困難を伴います。
ポンピドゥーセンターは「バンクシーのネズミ」の作者ではなく、切断された「パネルの損傷」にのみ苦情を申し立てる権利があります。
ポンピドゥーの運営陣は 「パネルを修理するために苦情を申し立てる」として争う姿勢。
【著作権は敗者のためのもの】by バンクシー

著作権は敗者のためのものである
Banksy
Copyright is for losers
バンクシーは本当に作品を取り戻そうとしたの?
バンクシーがストリートに描いた自分の作品を独占する権利を主張したことは、今まで一度もありません。
バンクシーは、本当に作品を回収しようとしたのでしょうか?
これは芸術的パフォーマンスなのか、それとも作品を保存したいというシンプルな願望なのでしょうか?
最後に
実はこのネズミ、2018年7月にも盗難未遂にあい、巡回中の警備員が間一髪のところで救っています。
「バンクシーから盗難を指示された」だなんて、今回ばかりはバンクシーが姿を現さないのを良いことに逃げたようですね。
おそらくは、転売目的の犯人、または熱狂的なコレクターによる盗難でしよう。
例えばこれが、「一部始終を誰かに撮影させてバンクシーがドキュメンタリーとして発表」、なんていうことも考えられなくはないですが、その可能性はちょっと低いですよね。
バンクシーが自分でストリートに残したステンシル作品に執着を持つということは考えられません。
もちろんバンクシー自身、「自分は関与していない」と公式に反論してますが、覆面芸術家ゆえ、法廷で顔をさらして証言することはないでしょうね。
いずれにしても、バンクシーがパリのポンピドゥーのパネルに描いた「カッターに乗るネズミのステンシル」は見つかっていないのです。
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