■2019年6月、ステンシルアートのみならず現代アート界のスターに上りつめたバンクシーのバーチャル展覧会がパリで行われたのをご存知でしょうか?
■パリのグラフィティ美術館がバーチャル・バンクシー展を開くに至った驚きの真相について解説します。
Contents
パリのグラフィティ美術館がバーチャル・バンクシー展を開催
人々に衝撃を与えたバンクシー展とパリのグラフィティ美術館
パリで発表されたグラフィティー美術館のバンクシー展は、Facebookで20万人以上が「いいね」を押して興味を示し「見逃せない」イベントとしてメディアのスケジュールに登場しました。
・VOGUE FRANCE
https://www.vogue.fr/culture/article/banksy-a-lhonneur-dune-exposition-a-paris
・BFMTV
https://www.bfmtv.com/culture/une-exposition-banksy-prevue-en-juin-a-paris-1642561.html
・Exoisition Banksy Facebook
https://www.facebook.com/events/537788573367598/?ti=icl
顔も身元も不明な謎のスター、バンクシーの回顧展がフランスで公式に行われたことはありません。それ故、このイベントにフランス中が興奮しました。
一方、グラフィティ美術館の創設者グレゴリー・ジュベ(アーティスト名「アレック」)は、パリのサンティエのパサージュでストリートアートに情熱を注いでいました。彼の経営する美術館は完全に無料ですが、公共施設との関係は一切ありません。
ストリートアートは全ての人のものです。
Grégory Jubé – Musée du Graffiti
入場料を取るのは不可能でした
30代の彼は、かねてからこの美術館を長期間開けておくことができるかどうか、疑問に思っていました。そこでバンクシーの出番だったのです!
謎のイギリス人と未公開キャンバスと小包の中の お金
昨年の夏、イギリス人が数人美術館を訪れました。
Grégory Jubé – Musée du Graffiti
私は彼らにコンセプトを説明して自分たちで訪問させました。
彼らが帰った後で、訪問者が壁に一筆残す事ができる”wall of fame”に『Banksy』のサインを見つけて、何かの冗談だと思いました。

ところが数日後、彼はキャンバスの入った小包を受け取ります。キャンバスには、謎めいたメッセージが書かれていました。

バンクシーの署名入り未公開キャンバス(グラフィティ美術館)
THANKS GOD BANKSY
I’LL BE HERE TOMORROW.
ありがとう、バンクシー。
明日、私はここにいるでしょう。
神を意味する”God”の上には、芸術家バンクシーの署名がされていました。
本当のバンクシーかどうかは今もわかりません。
Grégory Jubé – Musée du Graffiti
もしかしたら冗談かもしれません!
アレックによれば、その小包にはお金も入っていました。
『金額は言えないけど、美術館の運営を続けるには十分な額』だったと言います。
彼はバンクシー に連絡を取ろうとしました。
小包みには真贋証明書が入っていなかったので、誰かの冗談かもしれません。
Grégory Jubé – Musée du Graffiti
たとえ冗談だとしても、この出来事をきっかけに、このキャンバスや今日では見ることの出来ない破壊されたバンクシーの作品の写真を展示しようと思いつきます。
ミステリアスなブリストルのアーティストの作品を展示するのです。
「作品は通りで手入れる」とグレゴリー・ジュベは言います。
「でもそれは、作品を売って豊かになるためではなく保存するためです。」「パリでバンクシーの作品が清掃員の無知から、またはファンや泥棒がステンシルの描かれた壁を切り取って建物を破壊することを恐れて、翌日には消されているのを見ました。」
批判にさらされたグラフィティ美術館

各国で開催された非公認の展覧会をバンクシーが否定
バンクシーにとって、話題になることは決して悪いことではありません。
バンクシーの許可なく開催された展覧会について、バンクシーが法的に攻撃したことはありませんが、2018年8月、モスクワで開催された展覧会で主催者が入場料として約20ユーロを要求した事をきっかけに、公式に否定しています。
遊園地の観覧車でもない限り、自分(Banksy)の作品を見るためにお金を払う必要はないよ。
Banksy – Instagram
バンクシーは550万人の登録者をもつ自身のInstagramアカウントで、英国で期間限定でオープンした遊園地「Dismaland」を例に出して、フォロワーに返信しました。
また、公式ホームページではそれらの展覧会をフェイクとして告発しています。
バンクシー 唯一の「公式」サービスは、買い手がだまされるのを防ぐために作品の真贋性を証明する権限を与えられた《Pest Control》と、商標登録問題でやむなくオープンする事になった《Gross Domestic Product》だけです。
グレゴリー・ジュベは、パリのバンクシー 展を無料にしようと思いました。展覧会を無料にすれば、英国の芸術家バンクシー にとって重要な、営利問題をクリアできると思ったからです。
だから、彼は批判に耐えました。『バンクシーがキャンセルを要求しない限り、展覧会を開催します!』
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批判にさらされたグラフィティ美術館
小さな美術館とその創設者は批評家の餌食になってしまいます。
瞬く間に拡散されたバンクシー展でしたが、彼は展覧会の2週間前になって、「これはFacebook 上のバーチャル展覧会だからこの場所には絶対に来ないように」と呼びかけたのです。
当初は本当に展覧会を開催する予定だったのでしょうか。資金繰りが合わなかったのか、作品が集まらなかったのか、それとも作品を通りから盗むつもりだったのでしょうか。
実際の展覧会が開催されることはありませんでした…。

こうして多くの人を巻き込みがっかりさせて、6月1日土曜日の午後14時きっかりにバンクシー のバーチャル展覧会が、グラフィティ美術館のFacebook ページで開催されました。彼がどんなにバーチャル展覧会だから来ないようにと呼びかけても、美術館の前にはすでに長蛇の列が出来ていました。
グラフィティー美術館の公式FBでは、一枚、また一枚とバンクシーの作品画像がコメントとともにシェアされました。
最後に20枚目の画像が投稿されると、グラフィティ美術館は、経済的理由による美術館の閉館を発表。
オーディエンスを、美術館再建のためのクラウドファンディングへと導きました。
彼のFacebookページが『詐欺』などの罵詈雑言であふれかえったのは言うまでもありません。

Musée du Graffiti
site : http://www.arek.fr/museedugraffiti
所在地: 20 Passage du Ponceau, 75002 Paris