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バンクシー が公開したメランコリックで魔法のようなクリスマス作品
■アート界のお騒がせアーティストで活動家、バンクシーの作品がクリスマス前のバーミンガムに降臨しました。
■作品は、ホームレスの数が英国で記録的な高さに達している現実を暗示。
■バンクシーは12月9日の朝、自身のInstagramアカウントで最新壁画作品をフィーチャーした短いビデオクリップをシェアしました。
バンクシーのインスタグラムに投稿された映像
バーミンガムに神のご加護がありますように。
ベンチの上のライアンを撮影した20分の間に、通行人が温かい飲み物と2本のチョコレートバー、ライターをあげていたよ。彼は決して何も頼んでいなかったけどね。
Banksy, Instagram
12月12日の総選挙3日前に公開されたバンクシー のインスタレーションは、動画と合わせてじっくり見ると、さらに心を打たれます。
バンクシーの公式Instagramアカウントにアップロードされたショートフィルムは、クラシックなホリデーチューン「I’ll Be Home for Christmas」のメランコリックなBGMで演出されており、ホームレス(を演じる)男性に注目が集まりました。
(ビデオのキャプションは、彼を「ライアン」として曖昧に特定するだけです。)
観客は、バンクシーの壁画に隣接するベンチに荷物を置いて骨を休めるライアンを見て、2匹のトナカイが12月の夜空の旅へ、彼を連れ去るかのように錯覚させられます。
ホームレスの窮状を捉えたバンクシーのインスタレーション

イギリスのバーミンガム、ジュエリークォーターのVyse Streetにあるバンクシーの最新インスタレーションは、ビデオと壁画のペアで現れました。
作品は、ホームレスの数が英国で記録的な高さに達しているという現実を暗に示しています。
何の変哲も無いレンガの壁に、バンクシーのシグネチャーでもある白と黒のコントラストで立体的に描かれたこの壁画は、星空へ駆け上がるサンタクロースの魔法のトナカイを描いているようです。
おもちゃやプレゼントで満たされたサンタクロースのソリの代わりに、トナカイは壁のそばにあるベンチにつながれているようにも見えます。
» バンクシー本人による写真集”Wall and Piece”【日本語版】 はこちらです。
ヨーロッパ最大のジュエリー産業が集まるジュエリークォーターとは

今回作品が描かれたジュエリークォーターは、英国の全ジュエリーの40%を生産するヨーロッパ最大のジュエリートレード企業の集積地。
バンクシーは撮影中にライアンに温かい飲み物や食べ物を差し入れた通行人のやさしさを称賛しています。
宝飾品とは無縁の生活を送っているであろうホームレスの男性、ライアンの貧困を想像させる映像でもあります。
もうすぐクリスマスだっていうのに、寒さの中こんな寂しい夜をおくる男がいる、助けてやりたいなぁ...
バンクシーのそんな独り言がきこえてきそうです。
» バンクシー監督ドキュメンタリー作品”イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ(日本語字幕版)”もどうぞ。
英国のホームレス問題

バンクシーの母国、イギリスにおけるホームレスを取り巻く問題はとても深刻です。
イングランドとスコットランドでホームレス撲滅キャンペーンを行うチャリティー団体『シェルター』が先月発表した分析によると、英国には現在少なくとも32万人のホームレスがいると報告されています。
バンクシーが今回プロジェクトの舞台に選んだバーミンガムは、特に深刻な数字を示してており、73人に1人が家と呼べる場所を待たずに暮らしています。
バンクシーがクリスマスTシャツを発売

バンクシーのクリスマスTシャツ
そんな中、@banksygrossdomesticproductで発表されたとおり、12月12日選挙の夜にバンクシー の地元ブリストルで開催されたイベントで、バンクシーのクリスマスTシャツが販売されました。
これまでバンクシーは、長年にわたり様々なNGOと協力してきました。
そのうちの1つが、@lovewelcomesプロジェクトです。このプロジェクトでは、Gross Domestic Product で販売された「ウエルカムマット」を制作し、ギリシャ難民を支援。
また、2017年9月には、ロンドンで開かれた世界最大の武器見本市の反対側でアート・ザ・アームズ・フェア展( The Art The Arms Fair Exhibition 2017 )に参加して作品を展示。収益を寄付して武器取引キャンペーンへの批判活動を支援しました。
今回も、クリスマスTシャツの収益はすべて4つのホームレス慈善団体に寄付されています。
✔︎2019年 ギリシャ難民を支援するためにバンクシー が販売した「ウエルカムマット」
✔︎2018年 クリスマス前にバンクシーが発表したボートタルボットの壁画作品
✔︎2017年 アート・ザ・アームズ・フェア展で武器取引キャンペーンへの批判活動を支援したバンクシーの作品
» 上記の作品については【Banksy shop】バンクシーのオンラインショップの作品解説と当選者発表【Gross Domestic Product】ご覧ください。
活動家としてのバンクシー

バンクシーの政治活動家としてのアイデンティティは、彼の芸術作品に長い間影響を与えてきました。
たとえば2017年に、彼は選挙で保守党候補に反対する票と引き換えに、彼の故郷のブリストル市民に無料のプリントを提供。
ただし、プロモーションは当局によってすぐに中止されています。
バンクシーがバーミンガムに描いた壁画はその後どうなったの?

ビデオ映像を公開してすぐに赤い鼻の落書き
Vyse Streetの壁に描かれたバンクシーの作品の周りにはその後フェンスが設置されましたが、 Instagramの公開から数時間後、 何者かがフェンスを飛び越えて2匹のトナカイに赤い鼻の落書きをしました。
Jewellery Quarter Development Trust(JQDT ) のエグゼクティブディレクター、ルーククレーン(Luke Crane)氏は、グレーのパーカー、ジーンズ、トレーナーを着た25〜30歳くらいの男がトナカイの鼻に赤いペイントをした後、「歩いて立ち去った」と語っています。
バンクシーのホームレスへのメッセージを守り続けることで、コミュニティに真の影響を与えることができます。
Luke Crane (JQDT)
※Jewellery Quarter Development Trust(JQDT)
2011年に設立されたJQDTは、バーミンガムの歴史的なジュエリークォーターにあるコミュニティの中心として、コミュニティの利益のために運営されているコミュニティインタレストカンパニー。
その後、壁の所有者であるネットワークレールによって、壁画を保護するプレキシガラスが取り付けられました。
@networkrailのスタッフは、最新のBanksy作品をプレキシガラスでカバーして強化し、さらなる破壊行為から作品を保護。#バーミンガム@bbcmtd
鉄道ファミリーとして、特にこの時期(年末のクリスマスシーズン)私たちの心はホームレスの方を向いています。
デイビッドゴールディング (ネットワークレール)
Banksyの壁画はホームレスの窮状を非常によく捉えています。
私たちは落書きを思いとどまらせ、ネットワーク周辺から落書きを消すことに多くの時間を費やしてきました…。
しかし、正真正銘のバンクシー作品はとても貴重なものです。
バンクシーのトナカイ壁画住所
Banksy – Ryan & His Reindeer
90 Vyse St Birmingham B18 6JZ
イギリス
まとめ
2018年のクリスマス直前に英国の鉄鋼の街ボートタルボットにあらわれた作品に引き続き、2019年のクリスマスにバンクシーから届いた季節のご挨拶は、見た人の心がほろ苦く暖まるような、それでいて社会問題に注目し、考えさせられる、そんな素敵なクリスマス動画です。
文脈 やハプニング、そこで暮らす市井の人々の行動、時間の経過による変化を含めた全てがバンクシーのアートであり、そこにある限り変化し続ける環境そのものがアートである、そんな風に考えることも出来るのではないでしょうか。
また、ライアンに温かい飲み物を差し入れた通行人の存在により、僅かながら手を差し伸べる人がいることがわかる、だから映像を見た私たちがホームレスの存在に大きなショックを受けることもありません。もしかしてこの映像を見て、温かいものを買い同じように行動する人がいるかもしれませんね。
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