Banksy

バンクシーの正体を解き明かすドキュメンタリー【Banksy Most Wanted】

◾️本記事では「バンクシーの正体と3つの仮説」についてレポートしたフランスのドキュメンタリー『Banksy Most Wanted』を紹介。

◾️『Banksy Most Wanted』は、バンクシーに魅了された人々に問いかけることでブリストル出身の覆面アーティスト・バンクシーの軌跡をたどります。

◾️2018年10月5日、ロンドンのサザビーズで警報が鳴り響きました。1億4000万円で落札されたばかりのバンクシーの代表作「風船と少女」が、ぼう然とする観客の目の前でひとりでに裁断・破壊されたのです。

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【Banksy Most Wanted】とは

https://www.facebook.com/banksymostwanted/posts/110274107387306

『Banksy Most Wanted』は、バンクシーとその作品に関わった人たちにインタビューしながら、「バンクシー という現象」そして「バンクシーの正体」についてせまります。

特にバンクシーのシュレッダーとその後について、サザビーズのオークション会場にいた人たちのインタビューから知ることができます。

この作品は、トライベッカ映画祭の公式セレクションでドキュメンタリー部門に選ばれ、世界中の名門フェスティバルで取り上げられています。

今回は、そんな『Banksy Most Wanted』の要約・レビューをしていきます。

「アートクーデターのスペシャリスト・バンクシーの背後にいるのは誰?」

世界中の人がバンクシー についてそんな疑問を持っています。

『Banksy Most Wanted』は、1990年代初頭から現在に至るまでのストリートアーティスト・バンクシーのキャリアを振り返り、謎の正体にせまるハートウオーミングなドキュメンタリーです。

視聴方法

ドキュメンタリー『Banksy Most Wanted』はスイスの公営放送局「RTS」で2020年7月23日まで無料公開。(英・仏語)

>> 2020年7月23日まで視聴可能>>ドキュメンタリー「Banksy Most Wanted」

ドキュメンタリー『Banksy Most Wanted』は、フランスのテレビ局「Canal+」が制作してフランスのお茶の間で放映。そのためナレーションはフランス語、出演者は英語を話しています。

語学が苦手な方は、英語字幕を表示してごらんください。英語はなんとなくわかってもフランス語の部分はむずかしいかもしれません。その場合は、自動翻訳で日本語字幕にしてごらんください。機械翻訳では所々おかしな日本語になりますが、映像からあるていど内容を想像できます。

更新情報

現在『Banksy Most Wanted』を視聴することはできませんが、本記事ではドキュメンタリーの内容を全て公開します。

それでは、いきましょう。

» バンクシー監督ドキュメンタリー”イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ(日本語字幕版)”はこちらです。

【Banksy Most Wanted】アートクーデター・バンクシーの背後にいるのは誰?

banksy most wanted documentary 2020
Banksy Most Wanted

【Banksy Most Wanted】基本情報

タイトル:Banksy Most Wanted

・2020年・フランス・90分
・オリジナル放映:2020年6月フランス・カナルプラス
・監督:Seamus Haley, Aurélia Rouvier
・シナリオ:Seamus Haley, Aurélia Rouvier, Laurent Richard
・ジャンル:ドキュメンタリー
・制作/放映:Scarlett Productions, Cross Borders Films, Canal+
・権利者:Mediawan Rights
Tribeca film festival selections:トライベッカ推薦

タイトルは『Banksy Most Wanted』なので内容がわかりにくいですが、本作は以下の10章で構成されています。(ざっくり構成を分けてタイトルを付けてみました)

  • 第1章 「風船と少女」サザビーズ事件
  • 第2章 バンクシーとは
  • 第3章 ロバート・デル・ナジャとバンクシーの共通点
  • 第4章 スティーブ・ラザリディス:バンクシーを有名にした男
  • 第5章 バンクシーの政治哲学:ガザからポートタルボットまで
  • 第6章 バンクシーを盗んだ男ロビン・バートン
  • 第7章 バンクシーへの批判:アートの資本化を加速
  • 第8章 ジェイミー・ヒューレット説
  • 第9章 ロビン・ガニンガムとバンクシーの謎
  • 第10章 ブリストルボーイズクラブとバンクシー の手紙


今やアートマーケットだけでなく世界中のメディアを熱狂させる覆面アーティスト・バンクシーの成功までの道のりや政治哲学を、バンクシーとその作品に関わった人たち、そして街の人の声からあぶり出しています。

全90分ですが、あっという間に見終えてしまいました。

続いて、要約をご紹介します。

【Robin Banks誕生】バンクシーの名前の由来

Banksy Graffiti The Girl with the Pierced Eardrum
▲ブリストルのバンクシーを見に観光バスで訪れた日本人観光客団体
(出典:Banksy Most Wanted)

バンクシーの最初のグラフィティは、1990年代イギリスの都市ブリストルに現れました。

壁に絵を描くことは犯罪であり、グラフィティを描くためには匿名でなければなりませんでした。

バンクシーという名前は、当時グラフィティアーティスト「ロビン・バンクス」(Robin Banks)と名乗っていた時のファーストネームを、後に「バンクシー」と短縮したものです。

グラフィティはアンダーグラウンドな媒体ですが、バンクシーはステンシル技法を選ぶことでより早く作業をおえて、より多くの人に作品を見せられるようになりました。

2000年代に入ると、バンクシーはロンドンに拠点をうつします。

彼はインターネットを駆使して自分の作品を普及させることで、より多くの人の目にふれるようにしました。

バンクシーが美術館に侵入

Banksy and Mona Lisa smile - Louvre Museum 2004 Paris
▲バンクシーとモナリザ、2004年ルーブル美術館 (出典:バンクシー、Wall and Piece)

しかし、ストリートの壁では物足りなかったのでしょうか、バンクシーはついにアート市場に参入します。

2003年から2005年にかけて、バンクシーは監視システムをくぐりぬけて8つの美術館に侵入し、作品を展示することに成功。

1997年から2008年までバンクシーの代理人を務めたスティーブ・ラザリディスは「すべてが正確かつ綿密に計画されていた」と語っています。

身分をかくして美術館に入るための「偽ヒゲとレインコート」、路上で作業をするための工事用ジャケット。

変装することでバンクシーは白昼堂々作業を行ったのです。

ラザリディスはバンクシーの匿名性を保つためにフェイクニュースを拡散し、中には新聞で取り上げられたものまでありました。

» バンクシー本人による作品集”Wall and Piece”【日本語版】 はこちらです。

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注目されるために描くバンクシーの共通点

If you want to say something and have people listen then you have to wear a mask.Banksy
出典:AZ QUOTES

自分の言いたいことを聞いて欲しければ、
覆面をしなければならない。
If you want to say something and have people listen then you have to wear a mask.

Banksy

バンクシーの作品の共通点は社会の潮流に警鐘を鳴らすことです。

2001年にはメキシコ・チアパスの「サパティスタ先住民運動」に注目。

2005年にはパレスチナの不正を糾弾するためにガザへ行き、2017年にはヨルダン川西岸ベツレヘムに「Walled-Off Hotel」をオープン。

2019年のヴェネチア・ビエンナーレではマスツーリズムとクルーズ船を批判しました。

バンクシーが明かしたのは私たちが見ようとしないものだった

Banksy Port Talbot - Xmas 2017
▲イギリス、ポートタルボットのガレージの壁に描かれた大気汚染を描いたバンクシーの壁画 (出典:Ben Birchall – AFP)

ブリストルの北約100キロの街ポート・タルボットのような人里離れた場所にメディアを誘い、予期せぬ住民たちを巻き込みます。

バンクシーはポート・タルボットで工業都市の汚染を告発する壁画を描いてインスタグラムに動画を投稿しました。

【バンクシーの正体】バンクシーは21世紀のピカソである

バンクシーの作品価値の高まりは、彼の悪評と同じ曲線をたどっています。

これをビジネスチャンスと捉えて大金を稼ぐ人もいました。

バンクシーの作品を最初に盗んで販売したロビン・バートン

ロビン・バートンはバンクシーのステンシルを壁から盗んで販売
▲Robin Barton(出典:Artnet)

美術商ロビン・バートンは、マイアミのアートフェアに出品するために労働者をやとい、イギリスのフォルカーストーンの壁からバンクシーのステンシル「Art Buff」を切り取りました。

その際、住民から抗議されて作品をもとの街に戻したことを告白。

現在、バンクシーは現代アート界のトップ10に入るアーティストです。

バンクシーはレオナルド・ダ・ヴィンチやピカソ、アンディ・ウォーホルと同じくらい有名なのです。

しかしバンクシー のアートマーケットへの参入により、バンクシーは苛立ち、一部の人はバンクシーの誠実さを疑うようになります。

バンクシーが生まれたグラフィーの世界から
遠く離れても、
彼はまだ意義のある言葉を
発することができるのでしようか。

ロビン・バートン

【バンクシーの正体】仮説①:ロバート デル ナジャはバンクシーなのか

ロバート デル ナジャはバンクシーなのか(バンクシーのステンシルとマッシブ・アタックのツアー相関図)
▲ロバート デル ナジャはバンクシーなのか (出典:dailymail)

ジャーナリストのクレイグ・ウィリアムズ(Craig Williams)は、マッシブ・アタック(Massive Attack )のシンガー、ロバート・デル・ナジャ(Robert Del Naja)とバンクシーのつながりを発見。

イギリスのグループ・マッシブアタックがアメリカ大陸、ヨーロッパ、オーストラリアで公演を行った都市にバンクシーの作品が次々とあらわれます。

あるコンサートで、ロバート・デル・ナジャは「バンクシーであること」をきっぱりと否定

【バンクシーの正体】仮説②:ジェイミー・ヒューレット

Jamie Hewlett owns Picture On Walls
▲Jamie Hewlett(出典:metro.co.uk)

2010年、バンクシーはドキュメンタリー映画 「Exit Through The Gift Shop」を発表。

専門家が調査すると、制作会社「Paranoid Pictures」はバンクシーの作品の真贋を証明する唯一の機関「Pest Control」の子会社であり、「Pest Control」を所有するのはロンドンのプリントハウス「Pictures On Walls」でした。

さらに調査をすすめると「Picture On Walls」の唯一の株主は、ゴリラズの創業者ジェイミー・ヒューレット(Jamie Hewlett)であることがわかりました。

ところがその後、ジェイミー・ヒューレットは別の第三者に「Picture On Walls」を譲渡しています。

これに関してヒューレットからのコメントはありません。

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【バンクシーの正体】仮説③:ロビン・ガニンガム

ロビン・ガニンガム
▲Robin Gunningham(出典:Bristol post)

2007年、ある古い写真からタブロイド紙のジャーナリスト、クラウディア・ジョセフは「ロビン・ガニンガム」という名前に突き当たります。

9年後、テキサスの犯罪学者がこの問題を調べ、連続殺人犯を追跡する方法で調査を行いました。

この研究は「バンクシー = ロビン・ガニンガム説」を裏付けています。

バンクシーの正体とは?

男、女、アーティスト集団?

バンクシーの元代理人スティーブ・ラザリディスによると 「人々が最後に望んでいるのは、誰かが神話を打ち砕くこと」。

人々は、バンクシーを「不服従と希望を体現する英雄」に変えました。

ロバート・デル・ナジャが「私たちはみんなバンクシーだ」と言ったように、バンクシーの匿名性により、誰もが彼を通して自己を投影することができるのです。

【Banksy Most Wanted】感想

ここから先は、私個人の感想になります。

感想①バンクシー について新しい情報を得ることができてよかった。
感想②バンクシーを愛する人々の生の声を聞いて胸が熱くなった。

感想①バンクシーの「風船と少女」シュレッダーとその後

今回バンクシー について新しい情報を得ることができてよかったこと、それは『Banksy Most Wanted』の中で、サザビーズの会場でアラームを作動させた人物が特定されていたことです。

どうやらコメディアンのように帽子とサングラスで「変装したあやしい男」をその日オークション会場にいた誰もが見かけていたのです。

男は中に仕掛けのあるブリーフケースを持っていました。

感想②バンクシーを愛する人々の生の声

特に印象的だったのは、バンクシーの作品が描かれた街の住民たちが「私たちのバンクシーだ」と一致団結して抗議。マイアミアートフェアからバンクシーの壁を取り返したエピソード。

もうひとつは、人里離れた工場町ポートタルボットでバンクシーの作品が壁ごと買い取られて、大きな穴が開いたガレージの前で心底がっかりする住民たちの姿

最終章では、バンクシーが幼少期に地元ブリストルで所属した「ブリストルボーイズクラブ」のオーナーが、バンクシーの手紙を読み上げるシーンに胸が熱くなりました。

壁画を描いたのは自分だ。
地域へのプレゼントのつもりだったが、
(経営が苦しければ)クラブのためにぜひ役立てて欲しい。

Banksy

その後、バンクシーの壁画は売却され「ブリストルボーイズクラブ」を経営難から救います。

最後に

世界中の名門フェスティバルで取り上げられている′′ Banksy Most Wanted ′′
▲世界中の名門フェスティバルで取り上げられている′′ Banksy Most Wanted ′′

フランスのお茶の間で放映されたバンクシーのドキュメンタリー『Banksy Most Wanted』について要約・レビューを紹介しましたが、いかがだったでしょうか?

ストリートアートを扱ったドキュメンタリーがこのようなエモーショナルな作品になるとは意外でした。

また、本編にはバンクシーに対するしっかりした批判があった点もよかったと思います。

今回は以上です。

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gypsycats

Paris Diary written by gypsycats from Paris France フランスとパリとアートを愛しています。アートやファッション、小旅行など様々なことを綴ります。

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