Paris Diary https://paris-diary.com written by gypsycats Wed, 08 Jul 2020 03:00:35 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=5.4.2 https://paris-diary.com/wp-content/uploads/2019/11/cropped-IMG_0855-4-32x32.png Paris Diary https://paris-diary.com 32 32 【パリで盗まれたバンクシーをイタリア農家で発見】バタクランでバンクシー盗んだ6人逮捕 https://paris-diary.com/banksy-stolen-from-paris-bataclan-found-in-italy/ Sun, 28 Jun 2020 14:13:05 +0000 https://paris-diary.com/?p=5090 ◾イタリア警察は6月10日、イタリア中部のアブルッツォ州(Abruzzes)にある農家でバンクシーの作品を発見したと発表。

◾今やすっかり著名になったイギリス人覆面アーティスト、バンクシーの作品は2018年にパリのコンサートホール「バタクラン」の防火扉に描かれたものです。

バンクシーのステンシルを盗んだ犯人を逮捕【バタクラン】

▲2018年筆者撮影「バタクランの防火扉に描かれたバンクシーのステンシル」

2019年にパリのコンサートホール「バタクラン」からバンクシーの作品を盗んだ容疑で金曜日に6人が起訴、2020年6月27日(土)に拘留されました。

6人は火曜日、パリ司法警察部(DCPJ)による捜査中に、イゼール県、オートサヴォア県、ヴァル県、ローヌ県、ピュイ=ド=ドーム県で逮捕。

▲イタリアで見つかったバンクシーのステンシル

現在2人は「組織的な企みによる強盗罪」で、他の4人は「組織的な企みにより盗品を受け取った罪」で起訴、6人全員が拘禁されています。

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盗まれたバンクシーの作品をイタリア中部の農家で発見

▲2018年筆者撮影「バタクランの非常扉に描かれたバンクシーのステンシル」

2020年6月11日にイタリアのローマで行われた記者会見で、昨年1月にパリで盗まれたバンクシーのステンシル「悲しげな人物」の描かれた扉がイタリア中部の農家で発見されたことを発表。

▲「バンクシーの扉」が発見されたイタリアの農家(出典:France 2)

イタリア警察は2020年6月10日、フランスの警察とイタリアの国家憲兵カラビニエリが共同で行った捜査中に、アブルッツォ州(Abruzzes)にある農家の屋根裏部屋から「盗まれたバンクシーの扉」を押収しました。

▲バンクシーのステンシルが発見された農家の屋根裏(出典:France 2)

事件には多くの疑問が残っていますが、確実なことは一つだけです。

この扉は確かに2015年の「バタクラン事件」の犠牲者へのオマージュとして、
バンクシーがステンシルした扉です。

2019年1月にパリで盗まれたこの扉は、6月10日水曜日の朝、
イタリア中部のアブルッツォ山脈にある人里離れた農家の屋根裏で発見されました。

盗まれたバンクシーの作品とは【バタクランの防火扉】

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. Fire door, Bataclan

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Fire door, Bataclan

防火扉、バタクラン

Banksy、Instagram

バンクシーが描いた「悲しげな人物像」は、2015年11月13日にパリとサン=ドニを襲った一連の襲撃で90人が犠牲になったとされるテロの現場に現れました。

合計130人が殺害され、そのうち90人が「バタクラン」でロックバンド「イーグルス・オブ・デスメタル」のライブを観戦していました。

ル・フィガロ紙によると、パレスチナのアルカイダのリーダーと見なされているハレド・ムスタファは、2011年に「フランスのバタクランを攻撃」する計画があったと告白しています。なぜならバタクランのオーナーはユダヤ人だから。

バタクランの窓や防火扉から逃げようとする人々

2015年事件当時ライブを行っていた「イーグルス・オブ・デスメタル」のシンガーJesse Hughesは親イスラエル派の活動家であり、イスラエルへのボイコット運動に断固反対。

2016年2月に行われたインタビューでは、2015年11月13日にバタクランがテロリストに狙われたのは「ユダヤ人が働いているという単純な理由だ」と考えており、Jesse Hughesは「個人的に非常にイスラエルを支持している」と打ち明けました。

一方、バンクシーはイスラエル軍によるパレスチナの占領に強く反対して、2003年頃から分離壁や瓦礫にステンシルをしたり、2017年にはパレスチナのベツレヘム世界一眺めの悪いホテル「The walled off hotel(ザ・ウォールド・オフ・ホテル)」を設立。

2018年6月、バンクシーがパリのコンサートホール「バタクラン」の黒い金属製の防火扉に描いた「悲しげな人物像」は、事件への追悼としてパリジャンから歓迎されました。

作品を盗んだ犯人たちは2019年1月25日~26日の夜、グラインダーで扉を切断して作品の描かれた扉を強奪

誰がどうやって扉を持ち込んだの?【バタクランからイタリアへ】

▲イタリアで押収されたバンクシーのステンシル

捜査員が農場に住む中国系の家族に聴き込みをしたところ、彼らは「大家の依頼でここに保管されている」と答えています。

▲作品が見つかった農家の中国人とフランス人ジャーナリスト(出典:France 2)

中国人居住者は屋根裏部屋に上がったことはなく、この芸術作品について何も知らないようです。

▲イタリア人大家(出典:France 2)

イタリア人大家も、カメラの前で自分は何も知らないと断言。バンクシーの絵がどうやってこの家に隠されたのか理解できないと言います。

その割には大家さん、顔を赤らめて目が泳いでいませんか。

誰が(バンクシーの作品を)持ってきたのかわかりません。
夜中に持ち込まれたとしても、
私は家の中で寝ていますから。

イタリア人家主
出典:France 2

警察は、この中の誰かが嘘をついていると確信しています。

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最後に

▲パリのコンサートホール「バタクラン」

作品が発見されたイタリアの農家と、今回フランスで逮捕された6人にはどんな関係があるのでしようか?

また、犯人たちは何と供述するのでしょう。

今後の展開が気になりますね。

去年パリで起きた別の「バンクシー盗難事件」では、「バンクシー本人から依頼されて作品を盗んだ」と供述し、無罪で釈放された犯人さえいました。(バンクシーは公式に事件との関与を否定)

回収された作品はフランスに戻ってくる予定です。

2018年6月にバンクシーがステンシルを描いた元の場所、パリの「バタクランの非常口」で再びバンクシーの作品を目にする日が来るなんて、今から楽しみですね。

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バンクシーが奴隷商人コルストンの台座に提案【Black Lives Matter】 https://paris-diary.com/banksys-idea-for-the-colston-statue/ Sun, 21 Jun 2020 18:15:53 +0000 https://paris-diary.com/?p=5054 バンクシーがまたしても新作を発表しましたね。今回はシンプルなドローイングですが、ブリストルで行われた「黒人差別に反対する抗議デモ = Black Lives Matter」での出来事を語るブロンズ像を作ろうと提案しています。

バンクシーのアイデアとは?

ブリストルで「Black Lives Matter」の抗議デモが行われた直後に、バンクシーが自身のインスタグラムにドローイングを投稿しました。バンクシーのコメントは以下の通り。

ブリストルの真ん中にある空っぽの台座をどうする?

コルストン像を恋しいと思う人、そうでない人、その両者の要求を満たすことができるアイデアがあるんだ。像を水の中から引きずり出し、台座の上に戻して首に太綱を結び、像を引きずり降ろす抗議者の等身大ブロンズ像を委託する。誰もが幸せ。有名な日を記念して。

バンクシー、Instagram
出典:バンクシー, Instagram

ではいったい、バンクシーが言う「コルストン像」とは何を指しているのでしょうか。

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ブリストルの港に投げこまれた奴隷商人コルストン像

ブリストルのデモ【Black Lives Matter】

6月7日(土)ブリストルで、米国ミネアポリスでのジョージ・フロイド殺害を受けた世界的な抗議行動「Black Lives Matter」の際に、17世紀の奴隷商人エドワード・コルストンの像をデモ隊が引きずり下ろし、抗議者たちが像の上に飛び乗りました。

デモ隊は像に赤と青のペンキを塗り、1人が像の首に膝を当て、アフリカ系アメリカ人のフロイドが白人警官の膝の下で死亡したことを想起。

台座から降ろされたコルストン像は、アンカー・ロードを転がされながらブリストル港に投げ込まれました。

また、今回ロンドンの「ロンドン博物館」敷地内にあった奴隷商人「ロバート・ミリガン像」も、デモの後に撤去されています。

17世紀の奴隷商人コルストンとは

エドワード・コルストン(Edward Colston, 1636年11月2日 – 1721年10月11日)はイギリスの商人、トーリー党の国会議員、篤志家、奴隷取引家。1680年には、イギリスのアフリカ奴隷貿易を独占していた王立アフリカ会社に加入したことで、奴隷貿易に大きく関与。彼は1689年に会社の最高職である副総督に就任。彼の資産のうちどの程度が奴隷貿易に由来していたのか正確な所は不明であるが、彼が奴隷貿易に関与して財を成したことは事実である。

Wikipedia

エドワード・コルストンのブロンズ像は、1895年に彫刻家ジョン・キャシディが制作。ポートランド石の台座の上に立てられました。

ブリストルのコルストン像の場所はどこ?

「コルストン像」は港に投げ込まれた直後にはGoogle マップ上でも水中に移動。Google社により「closed(閉鎖)」の文字が添えられました。(現在は水中から撤去)

その後、コルストン像はどうなったの?

出典:「Gentleman on the plinth : Manoel Akure 」
Photo credit : Kimberley Meadows 

翌6月8日、ブリストルのリーズ市長は「コルストン像は侮辱であり、撤去されたことに損失感はない」と語ると、「像を回収して博物館のいずれかに収蔵する可能性が高い」と述べました。

6月11日、コルストン像はブリストル市職員により海から引き揚げられて、現在は市が安全な場所に保管。

コルストン像は、抗議者たちが書いた落書きやロープを取り除かずに博物館に展示される予定です。

いつ、どこに展示されるかは確認されていませんが、像が撤去されて以来、この像をどうすべきか、またその場所に何を置くべきかについて激しい議論が交わされてきました。落書きで覆われた台座は今もそのまま残っています。

バンクシーはその台座にコルストン像を戻して首に綱をかけ、「コルストン像を引き下ろそうとする抗議者たちの像」を立てれば誰もがハッピーだと提案したのです。面白いアイデアですね。

最後に

ブリストル市議会によると、奴隷制度から今日に至るまで平等を求めて戦い続けた300年にわたる歴史を学べるとして、「コルストン像」は今後、デモで使われたプラカードと一緒に博物館で展示される予定。

「像を水の中から引きずり出し、台座の上に戻して首に太綱を結び、像を引きずり降ろす抗議者の等身大ブロンズ像をつくろう」というバンクシーのアイデアは、受け入れられなかったみたいですね。

それならバンクシーが「デモ隊に引きずり下ろされるコルストンのブロンズ像」のフィギュアを自ら制作し、ブリストル美術館に侵入して勝手に展示してみてはどうか、そんなことを考えた次第です。

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バンクシーが新作で黒人差別に抗議する#Black Lives Matterを支持【燃える星条旗】 https://paris-diary.com/banksy-supports-blacklivesmatter/ Sat, 06 Jun 2020 15:13:02 +0000 https://paris-diary.com/?p=4860 米国の黒人男性ジョージ・フロイドの死(5月25日)から1週間以上が経過した6月6日土曜日、バンクシーがInstagramへ作品を公開して抗議行動「Black Lives Matter」への支持を表明しました。

バンクシーが新作で黒人差別に抗議する#Black Lives Matterを支持【燃える星条旗】

バンクシーが「黒人男性の死」への悲しみや憤りを表現したと見られる作品をInstagramに投稿。

▲出典: banksy.co.uk

バンクシーは投稿した画像の最後に自身の声明文を掲載しています。

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「有色人種」の人々は「白人のシステム」に邪魔されている by バンクシー

▲出典:Banksy, Instagram

最初は黙ってこの問題について黒人たちの話を聞くべきだと思っていたんだ。

でも、なぜ私はそんなことをするのか?
これは彼らの問題じゃない。私の問題だ。

「有色人種」の人々はシステムに邪魔されている。「白人のシステム」にね。まるで、壊れた配水管が下の階に住む人のアパートを水浸しにするように、欠陥のあるシステムが彼らの生活を悲惨なものにしている。
でもそれを直すのは彼らの仕事ではない。
誰も彼らをアパートの上の階に入れてくれはしないんだよ。

これは白人の問題なんだ。もし白人が直さなければ、誰かが2階へ来てドアを蹴り破らなければならない。

Banksy, Instagram

確かにバンクシーは最初、米国での事件が暴動に発展しても沈黙を貫いていました。

しかし作品には、「燃える米国旗と黒い顔をした人物の遺影」が描かれており、「black people」(黒人)という言葉を使って語り出したバンクシーの声明文は、途中から「people of colour」となり「有色人種」への差別を指摘

また、バンクシーは去年6月に、イギリスの黒人ラッパー「Stormzy」のためにユニオンジャックの防刃ベストを制作。期間限定のポップアップ「グロスドメスティックプロダクト」でベストを展示しました。

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世界各地で警察の暴力に反対するデモの波が拡大

故人をしのぶキャンドルから燃え移った炎が暴動で燃える都市を想起。

ジョージ・フロイド氏は5月25日にミネアポリスで白人警官に膝を首に押し付けられて死亡しました。彼の死をきっかけに、世界中で抗議の声が上がり、デモを行う国や都市が日に日に増えています。

ブリストル、ベルリン、オークランド、リオ

5月末から6月初頭にかけて、デモの波がアメリカの主要都市だけでなく、イタリア、イギリス、ドイツ、カナダ、ニュージーランド、アイルランド、フランスにも拡大。

ブラジルのリオデジャネイロ州政府のグアナバラ宮殿の外では、5月31日、デモ隊がスローガンを使って貧民街での警察の取締りの状況を糾弾。

政府の閣僚たちは大規模な集会を避けるよう人々に促していますが、週末には英国全土で反人種差別の抗議行動が計画されました。

推定4,000人がバンクシーの故郷ブリストルでのデモに参加すると予想され、日曜日にはブリストルのキャッスルパークまで市内を行進

バンクシーの故郷ブリストルでは日曜日、17世紀イギリスの奴隷商人「エドワード・コルストン」の銅像を抗議者たちが打ち倒しました。

パリ

▲2020年6月2日パリ(筆者撮影)

6月2日のパリでは、2016年に警察の介入で死亡した24歳のフランス国籍の黒人男性「アダマ・トラオレ」さんの事件に対する「正義」(Justice)を求めるデモ隊が、裁判所前の環状道路を封鎖。

▲2020年6月2日パリ(筆者撮影)

パリで約2万人が参加したといわれるこのデモは、アダマ・トラオレとジョージ・フロイドに対する「正義」(Justice)を要求。

» スティーブ・ラザリデス出演ドキュメンタリー映画【Banksy And The Rise Of Outlaw Art】(2020年)はこちらです。

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最後に

バンクシーの正体は長い間不明とされてきましたが、21世紀における最も多作なアーティストの一人として、ポップで万人受けするモチーフと政治性を帯びた作風に注目が集まっています。

現在、バンクシーのInstagramのプロフィール写真は、警察の不当な暴力により非業の死を遂げた黒人男性「ジョージ・フロイド」氏を追悼するかのように黒一色で塗られています。

バンクシーは、今までにも移民や難民、マイノリティーといった社会的弱者をテーマにした作品を数多く発表してきました。

今回の作品では「ジョージ・フロイドの死」を暗喩して、人種差別を「白人の問題」であり、白人であるバンクシーにとって「自分の問題である」と訴えています。

また、オークションで自身が過去に描いた「猿の英議会」が13億円で落札された際にも同様に、Instagramで真っ黒い画面にロバート・ヒューズ(美術評論家)のテキストを投稿しており、今回の意思表明にもバンクシー従来の表現方法がとられていると言えます。

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【バンクシーのゲームチェンジャー】ヒーローはマスクをした黒い肌の空飛ぶ看護師【Game Changer】 https://paris-diary.com/banksy-game-changer/ Wed, 06 May 2020 19:20:28 +0000 https://paris-diary.com/?p=4352 ◾バンクシーがコロナ禍のイギリスから医療従事者を称えて「マスクをした黒い肌の看護師人形」で遊ぶ子供のスケッチを発表。

◾イギリスの覆面芸術家でストリートアーティストのバンクシーは5月6日、突如インスタグラムに新作を投稿しました。

◾「ゲームチェンジャー」と呼ばれるこの作品は、イギリスにあるサウサンプトン大学病院に贈られたもので、一時的に病院の廊下に飾られた後で、チャリティーオークションに出品されます。

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【バンクシーのゲームチェンジャーとは】ヒーローはマスクをした黒い肌の空飛ぶ看護師【Game Changer】

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. . Game Changer

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【バンクシーのゲームチェンジャーとは】ヒーローはマスクをした黒い肌の空飛ぶ看護師【Game Changer】
【バンクシーのゲームチェンジャー】マスクをした黒い肌の空飛ぶ看護師
【バンクシーのゲームチェンジャー】バッドマンとスパイダーマン

Game Changer
ゲームチェンジャー

Banksy, Instagram

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【バンクシーのゲームチェンジャー】特徴

今回、バンクシーが発表したのはキャンバスの上に鉛筆で丁寧に描かれた素朴なスケッチ。投稿には一言「Game Changer」とキャプションがそえられていました。

従来のバンクシーのステンシルとはちがい、時間をかけてじっくり描かれたデッサンはとてもシンプルで、バンクシーの肉筆がしっかりと伝わってきます。

赤い赤十字を胸に、翼のような形のマントを着てマスクをした«黒い肌の看護師人形»で遊ぶ小さな男の子。

その涼しげな眼差しにはいたわりが感じられますが、少年の閉ざされた口元から表情を読み取るのは難しいように思います。

医療従事者は子供のおもちゃなのか

バンクシーの「ゲームチェンジャー」医療従事者は子供のおもちゃなのか

医療従事者は、飽きっぽい子供のおもちゃのように消費されてはいないでしょうか。

「ヒーローの人形で遊ぶ小さな男の子」、それは日常のどこにでもある光景です。

しかし、新型コロナの危機ではアメリカンコミックの架空のヒーロー、バッドマンやスパイダーマンはお払い箱となり、男の子は「黒い肌をした看護師人形」を「空飛ぶヒーロー」に見立てている。

バッドマンがコウモリの化身であるということもまた、意味深いですね。

「ゲームの流れを変えるのは、医療従事者である。」

イギリスの新型コロナによる死者数は、イタリアを抜いて3万人を超えました。

現在世界第2位の死者数を数えるイギリスにいるバンクシーの、医療従事者に対する切実な思いが伝わってきます。

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【ゲームチェンジャー】病院へ贈られた「聖者の絵画」


バンクシーが5月6日インスタグラムに投稿したこのスケッチは、バンクシーからとある病院へ贈られたプレゼントでした。

バンクシーは病院の従業員にこんなメモを残しています。

Thanks for all you’re doing. I hope this brightens the place up a bit, even if it’s only black and white.

あなた方の全てに感謝します。この作品は白黒ですが、現場が少しでも明るくなることを願っています。

Banksy


バンクシー が英国NHSの医療スタッフに捧げたこの作品は「Game Changer」(ゲームチェンジャー)とよばれ、「サウサンプトン大学病院」(University Hospital Southampton)の廊下で一時的に展示された後で、NHS国民健康保険財団のチャリティーオークションにかけられます。

NHSと当院で働くすべての人へ感謝の気持ちを込めて、バンクシー が制作した「聖者の絵画」。

この素晴らしいアート作品を公開できることを誇りに思います。作品は一時的に@UHSFTで展示。

前例のないこの時代に、
一旦立ち止まって考えさせるようなインスピレーションに満ちた作品です。

Paula Head, Southampton大学病院最高責任者

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バンクシーのゲームチェンジャーの場所はどこ?【Game Changer】


バンクシーの新作「Game Changer」は、現在サウサンプトン大学病院内の廊下に飾られています。

バンクシーのインスタグラムに作品が投稿された翌日、サウサンプトン大学病院の公式サイトでバンクシーの「ゲームチェンジャー」が紹介されました。

New Banksy artwork displayed at University Hospital Southampton

【サウサンプトン大学病院とは】 University of Southampton Hospital

 【サウサンプトン大学病院】 (University of Southampton Hospital)の医療重視者たち

サウサンプトン大学病院では、イギリスで開発中の新型コロナウイルス向け治療薬の臨床試験が進んでおり、臨床試験の初期結果は6月末までに出る見込みだといいます。

また、F1のマクラーレン・グループは、自動車部門と応用技術部門の専門知識を活用して、エンジニアがサウサンプトン大学と提携。新型コロナウイルスの患者を治療しているNHS医療スタッフ向けの保護具を開発しています。

4月には、新型コロナウィルスによりサウサンプトン大学病院内で2人の医師が亡くなったところでした。

【所在地】サウサンプトン大学病院

バンクシーのゲームチェンジャーが贈られた 【サウサンプトン大学病院】 University of Southampton Hospital

住所:University of Southampton Hospital

Tremona Road Southampton Hampshire SO16 6YD

最後に

欧米のコロナの医療現場では、日々「命の選択」が行われています。

コロナとの戦いの最前線に立つサウサンプトン病院では、その流れに終止符を打つべく、日々、治療薬の臨床試験や保護具の研究が行われています。

今回バンクシーは、医療従事者を称えるだけでなく看護師の手足をことさら黒く描くことで、人種問題に言及することも忘れませんでした。

欧米では毎晩8時になると、窓を開けて一斉に拍手をして医療従事者やエッセンシャルワーカーに感謝を表明することが一日の日課になっています。

しかし、私たちは医療従事者を飽きっぽい子供のおもちゃのように消費してはいないでしょうか。

また、医療従事者たちは本当に十分な評価、又はそれに見合った対価を受けているでしょうか。

コロナ禍に生きる私たちにとって「Game Changer」は誰かと問われれば、それは「医療従事者」であるといっても過言ではないでしょう。

また、現代アート界の「Game Changer」は誰かというと、それは、この言葉を発したバンクシー自身だと言えるでしょう。

しかし、危機的状況下で、私やあなたもまた「ゲームチェンジャー」でいようとすれば、その危機は方向を変えるかもしれません。

バンクシーの地元ブリストルでは、フェルメールの作品を模倣したバンクシーの壁画「真珠のイヤリングの少女」に、青いサージカルマスクが付けられましたが、それがバンクシーの仕業であるかどうかは分かっていません。

また、バンクシーは先月にもロックダウンにちなんで自宅のトイレで暴れ回るネズミたちの絵を発表したところでした。

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【バンクシーの顔】この人がBanksy?【バンクシーの顔が分かる唯一のポートレートとインタビュー】 https://paris-diary.com/this-is-banksy/ Sat, 02 May 2020 16:26:13 +0000 https://paris-diary.com/?p=4116 2019年7月、正体不明のグラフィティアーティスト、バンクシーの “忘れられた”テレビインタビューが、ITVニュースの保管庫から発見されました。

長い間謎とされてきたバンクシーの顔が分かる唯一のポートレートと、バンクシー自らカメラの前に登場した貴重な映像をご覧ください。

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【バンクシーの顔】この人がBanksy?【バンクシーの顔が分かる唯一のポートレートとインタビュー】

【バンクシーの顔】この人がBanksy?【バンクシーの顔が分かる唯一のポートレートとインタビュー】

バンクシーの忘れられたインタビューとは【Banksy Rare Interview from2003】

イギリスのメディア「ITV London Tonight」のレポートは、2003年にバンクシーがロンドンで開催した展覧会「ターフ・ウォー」の前に撮影されたもので、バンクシーが壁に黒い昆虫をステンシルしたり、

バンクシーの忘れられたインタビューとは【Banksy Rare Interview from2003】
Banksy drawing the insect on the wall, Turf War 2003 London

「KILL MORE」(もっと殺せ)と書かれたブロックで遊ぶ赤ちゃんの絵を描いたりする姿を見ることができます。

イギリスのメディア「ITV London Tonight」のリポーター、ハイグ・ゴードンによる2分間のレポートでは「バンクシー」とされるアーティストが35秒程話をしています。

これは、バンクシーが自発的にカメラに映った唯一の映像の一つです。

バンクシーとされる人物は、野球帽をかぶり、Tシャツを目の下まで引っ張って顔を隠していますがが、目や眉、額がはっきりと見えます。

【バンクシーの顔】この人がBanksy?【インタビューの映像とバンクシーの顔写真】

当時、バンクシーは28歳でした。

グラフィティライターは、素性をさらすわけにはいかないので変装しています。この2つを両立することはできません。

Banksy 2003,ITV

バンクシーの顔が分かる唯一のポートレート

バンクシーの元エージェントでフォトグラファー、スティーブ・ラザリディスが出版したバンクシーの写真集「Banksy Captured」には、この人物にとても良く似たバンクシーの姿が収められています。

バンクシーの顔 2003年「Turf War」
バンクシーの顔 Banksy's face by Steve Lazarides in Bristol, Easton (Banksy Captured by Steve Lazarides)

スティーブ・ラザリディスの写真集は修正されており、バンクシーの顔は分からなくなっていますが、目元がはっきりと写ったオリジナル写真がこちらです。

バンクシーの顔
出典:「The Observer」
2000年:スティーブ・ラザリディス

ITVのインタビューに答えるバンクシーと、髪の色や眉の形がとても良く似ています。

この写真はスティーブ・ラザリディスが撮影し、2000年に「The Observer」に掲載されたものです。ブリストルのEaston Roadにある「Redcliffe Imaging」の古い建物の前で、作品を前にしたバンクシーの姿が写っています。

ラザリディスの写真集とは文字の位置が少し違いますが、バンクシーが着ている服や帽子、ネズミやメタル部分の傷、さびなどが完全に一致します。

Banksy's rat " This box contains documents of no value" Bristol, Easton
出典:バンクシー「Wall and Piece」

バンクシーの背景に見えるネズミのステンシルが、バンクシーの著書「Wall and Piece」に掲載されているバンクシーの作品であることに間違いはありません。

このポートレートは、バンクシー自身がオーストラリアのシドニーのイベントで展示していることから、本人も気に入っていた可能性があります。

正真正銘の本物、バンクシーが2003年4月にシドニーで展示したバンクシーの顔の半分が写ったポートレートなのです。

バンクシーが2003年4月にシドニーで展示したバンクシーの顔が写ったポートレート
バンクシーが2003年4月にシドニーで展示したバンクシーの顔が写ったポートレート

2つの画像を並べてみました。

Banksy by Steve Lazarides

透過して重ねると、2つの画像は文字以外の部分が完全に一致します。

では、なぜ文字の位置が違うのでしょう?

答えは...

画像にフィルターをかけて拡大すると

Banksy " This box contains documents of no value"

どちらの文字もステンシルではなく、文字部分だけ合成されていることがわかりました。

ということで、どちらも本物のバンクシーの写真です。

バンクシーのもう一つの貴重なインタビュー【Banksy Rare Interview from ‘95】

2003年にITVが撮影したインタビュー映像のバンクシーの声は、2000年にイギリスのBBCチャンネル4のドキュメンタリー・シリーズ「Shadow People」で放映されたバンクシーのインタビューの声とほぼ完全に一致します。このことは、【バンクシーの作品解説11選】スティーブ・ラザリディスによるバンクシーの写真【Banksy Captured】の中ですでにお伝えしています。

以上のことから、「ターフウォー」で行われたバンクシーのインタビュー映像に映るバンクシーとされる人物は、バンクシー本人である可能性が極めて高いと言えるでしょう。

» バンクシー監督ドキュメンタリー作品”イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ(日本語字幕版)”はこちらです。

インタビューのアーカイブを偶然発見

「ターフ・ウォー」でのクリップを発見したのは、ITVウエストカントリーのロバート・マーフィーで、彼は他のバンクシーの映像を探していたところ、「インタビュー・ウィズ・バンクシー」というカタログが登録されたライブラリーのリストを見つけて驚いたと言います。

もしこれがバンクシーの映像なら、正体不明のステンシルアーティスト、バンクシーがメインストリームのテレビクルーのインタビューを受けた唯一の機会かもしれません。

バンクシーの姿を見たインタビュアーが語るバンクシーとは

ロバートはその後、バンクシーにインタビューをしたハイグに連絡を取りました。ハイグ は16年前にロンドン北東部のダルストンでバンクシーにインタビューしたことを忘れていました。

ハイグは「彼(バンクシー)のどんな姿にも大きな価値がある、だけど不思議なことに思い出せない!」と言います。

バンクシーの顔を見たよ。 
問題は、彼がどんな顔だったか思い出せないことです。

ハイグ・ゴードン

インタビューは、2003年7月に開催されたバンクシーの展覧会「ターフ・ウォー」の前に撮影されました。彼はこう付け加えます。

バンクシーの見た目については、何も言うことができません。 ひどいでしょう?

彼はリラックスしていて、のんびりしていて、愛想が良かった。私は彼のことが大好きだった。彼は、芸術家気取りではなくとても感じが良かった。

カメラが回る直前に私がジョークを言ったら、バンクシーはとても良い反応をしてくれました。私が『バンクシー、インタビュー中にそれ(Tシャツ)を取ったらどうするのかな』と言うと、彼は笑ってくれた。彼は私が本気ではないことを知っていました。

私たちはバンクシーが変装せずに作業する映像を撮り、変装せずに会話しました。

バンクシーの展覧会「ターフ・ウォー」【2003年ロンドン】

Banksy Turf War 2003 Girl with ice cream bomb

2003年7月18日から3日間の間、ロンドン東部の廃墟となったガレージで開催されたバンクシーの展覧会「ターフ・ウォー」は、バンクシーがオフビートで破壊的、そのユーモラスなアートにより世界的な評価を得るきっかけとなりました。

バンクシー「Turf War」2003年「アンディーウォーホルの顔が描かれた牛」

バンクシーは、農場の生きた動物にペイントし、羊の体にシマウマ模様を描き、牛には矢印マークを、豚には青いカラーリングをステンシルしました。

バンクシー「Turf War」2003年「シマウマ模様のやぎ」
バンクシー「Turf War」2003年「ペイントされた家畜」
バンクシー「Turf War」2003年「青いペイントのブタ」

バンクシーは当時、その理由をこう語っています。

楽しい絵を描くのは難しいけど、
少なくとも目の前でうろうろしたり鼻を舐めたり小便をしたりする何かがいれば、
絵が少し面白くなります。

Banksy 2003, ITV

また、ターフ・ウォーの展覧会の2日前にネルソン記念塔 (Nelson’s Column)に “指定暴動エリア “(Designated Riot Area)とスプレーしたことについて聞かれると、

 「あれはかなり面白いと思った 。」と答えています。

Banksy, Wall and Piece "指定暴動エリア "(Designated Riot Area) 2003年
 “指定暴動エリア “(Designated Riot Area) 2003年 Banksy, Wall and Piece

バンクシーは一人なのか

「バンクシーはグループではないか」とか考える人もいるようですが、バンクシーは一人です。

それは、バンクシーやスティーブ・ラザリディスが今までに出版した著書やドキュメンタリーを見ると分かります。

バンクシーと共に働き、共同作業を行い、バンクシーのメンバーだと考えられているアーティストたちは身元を明かしており、バンクシーの共同作業者として様々なインタビューに答えています。

» スティーブ・ラザリデス出演ドキュメンタリー映画【Banksy And The Rise Of Outlaw Art】(2020年)はこちらです。

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最後に

私は時々、匿名で人生を生きるのはどんな気持ちだろうかと考えます。
自分のアイデンティティを幾重にもにもわたって隠していくのは、とても奇妙なことでしょう。

リチャード・ジョーンズ、Tangent books

バンクシーの匿名性は長い間謎の源となっており、バンクシーが自らカメラの前に登場した事はないと考えられてきました。

バンクシーが監督した映画『Exit Through The Giftshop』では、バンクシーはフードを被ったシルエットとして撮影され、声もひずませています。

現在、世界で最も有名なアーティストでありながら、ごく一部の人々を除いて誰も彼の正体を知らないということについて、バンクシー本人はどのように感じているのでしょう?

「バンクシー 正体」で検索すると、多くはブロガーが書いたフェイク記事です。しかし、フェイク記事を残しておくことは、結果的にバンクシーの活動に都合の良いアイデンティティーを守るための唯一の方法といえるかもしれません。

いずれにしても、バンクシーの絵を見る人にとって「バンクシーの顔」や名前、正体が誰であるかは、ほぼどうでも良いことなのですから…。

» バンクシー本人による作品集”Wall and Piece”【日本語版】 はこちらです。

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【バンクシーの作品解説11選】スティーブ・ラザリデスによるバンクシーの写真【Banksy Captured】 https://paris-diary.com/banksy-captured-by-steve-lazarides-photos/ Fri, 24 Apr 2020 13:49:00 +0000 https://paris-diary.com/?p=3784 ■イギリスのフォトグラファーでバンクシーの元エージェント、スティーブ・ラザリデスがバンクシーの写真集「BANKSY CAPTURED by STEVE LAZARIDES」(スティーブ・ラザリデスが捉えたバンクシー)をリリースしました。

■本記事では、「BANKSY CAPTURED」に掲載されているスティーブ・ラザリデスが捉えたバンクシー初期の写真と作品について解説します。

【Banksy Captured by Steve Lazarides】 とは

2019年12月にバンクシーの元エージェントでフォトグラファーのスティーブ・ラザリデスがリリースした待望の写真集「Banksy Captured」には、これまでのバンクシーの未公開写真や、ストリートアドベンチャーによる愉快な逸話が多数出てきます。

英国のストリートアーティスト、バンクシー初期の作品と活動に興味がある人にとっては必読書といえます。

スティーブ・ラザリデスが出版したバンクシーの写真集「Banksy captured by Steve Lazalides」についてはこちらの記事をご覧ください。

スティーブ・ラザリデスが「Banksy Captured Steve Lazarudes」のハードカバー限定版を出版

昨日、突如倉庫に現れた私の@Banksy ハードバック特別版!
出荷に夢中で一時的に「紛失」していました。
金曜日にはウェブサイトで公開する予定です。
スリップケース入りのハードカバー版は1000冊限定で125ポンドです。

スティーブ・ラザリデス、インスタグラム

現在、限定版はすでにSold Out (通常版3rdエディションは注文可能):Banksy Captured by Steve Lazarides 

スティーブ・ラザリデスがドキュメンタリーに出演【Banksy And The Rise Of Outlaw Art】

スティーブ・ラザリデスがドキュメンタリーに出演【Banksy and the rise of outlaw art】

【Banksy And The Rise Of Outlaw Art】(バンクシーとアウトロー芸術の台頭)とは

バンクシーの写真集を出版したフォトグラファーのスティーブ・ラザリデスは、2020年3月にリリースされたドキュメンタリー映画「Banksy And The Rise Of Outlaw art」(バンクシーとアウトロー芸術の台頭)でインタビューを受けています。

Banksy And The Rise Of Outlaw Art [DVD]

このドキュメンタリーは、ストリートアートの伝説の中でもとりわけ「Pictures on Walls」のプリンターでアーティストのベン・アイネ(Ben Eine)によるバンクシーとのエピソードを特集しています。

こちらが「Banksy And The Rise Of outlaw Art」のトレーラーです。

【Banksy And The Rise Of Outlaw Art】

初公開: 2020年3月イギリス
監督: エリオ・エスパーニャ
映画脚本: エリオ・エスパーニャ
プロデューサー: エリオ・エスパーニャ、 トム・オーディル
108分

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インタビューの人物は「Banksy」本人なのか?

出典:ITV

上記「Banksy and the Rise of Outlaw Art」の予告編の中で、バンクシーの活動初期に撮影されたインタビュー映像のバンクシーの声は、2003年7月に行われた展覧会「ターフ・ウォー(Turf War)」の時に収録されたインタビューで、バンクシーとして紹介された人物の声に驚くほど似ています。

ターフ・ウォーで「ITV」のインタビューを行ったレポーターによると、この映像は2019年に世の中に出るまで、16年間も「ITV」のアーカイブで眠っていたと言います。

スティーブ・ラザリデスの写真集「BANKSY CAPTURED BY STEVE LAZALIDES 」には、ITVのインタビューでバンクシーとしてインタビューに答えている人物とほぼ一致するバンクシーの写真が掲載されています。

出典:BANKSY CAPTURED BY STEVE LAZALIDES

背景のネズミのステンシルは、バンクシーの著書「Wall and Piece」に掲載されているこちらの作品です。

出典:Banksy – Wall and Piece

ペンチを持ったかわいいネズミが錠をこじ開けようとしているようですが...

この箱には価値のない文書が入っています。

Banksy, Wall and Piece

作品の解説【Banksy Captured by Steve Lazarides 】によるバンクシーの写真

①GIRL WITH BALLOON TATE INSTALLATION

テイトインスタレーションの風船と女の子

Banksy Girl with Ballon Tate instalation Banksy captured by Steve Lazarides
出典:BANKSY CAPTURED BY STEVE LAZALIDES

バンクシーがフローティングガール(ヘリウムで満たされたダッチワイフでした!)に熱中した一連のインスタレーション。
どういうわけか、彼らの功績に値する注目を集めることはありませんでした。

STEVE LAZALIDES

派手な仮装をしてパフォーマンスを行ったバンクシーですが、どこまでも高く遠く飛んで行く赤い風船と空気人形は、ラザリデスが言うように成果に見合った大きな注目を集めることはなかった模様です。

ラザリデスが公開した写真の赤い風船には、「BANKSY」のロゴが見えますが、バンクシーの著書「Wall and Piece」では、マクドナルドの風船に変わっています。

この作品について、バンクシーはこんな言葉を残しました。

マクドナルドが子供たちをさらっていくよ。

Banksy, Wall and Piece
出典:全てBanksy – Wall and Piece

②GANGSTER GRANNIES

ギャングのおばあちゃん

GANGSTER GRANNIES, banks captured by steve lazarides
出典:BANKSY CAPTURED BY STEVE LAZALIDES

この写真はロンドンのサウスバンクで撮影しました。
作品は、バンクシーによる「違法な屋外展示」の一部でした。
何度かこの作品を撮りに戻りましたが、幸運にも作品にふさわしい3人のOG(オリジナル・ギャングスター)たちのスナップを撮ることができました。

STEVE LAZALIDES

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③ST. WERBURGHS

ワーバーグストリート

st werburghs banksy by steve lazarides
出典:BANKSY CAPTURED BY STEVE LAZALIDES

当時、ブリストルで何をしていたのかはわかりませんが、我々はプレス用にバンクシーのポートレートを撮影することになりました。
公正にみてまともな写真が1枚撮れましたが、残りはかなりひどかったです。

STEVE LAZALIDES

④HOUSE OF SIN

罪の家

出典:BANKSY CAPTURED BY STEVE LAZALIDES

バンクシーが、特に活発にこの地域を攻撃していた時期にサウスバンクで撮影。
あの頃、彼が一体どうやってここから立ち去り家に戻ったのかはわかりません。

STEVE LAZALIDES

背景に見えるのはロンドンを象徴する世界遺産の「ビッグベン」。

「ビッグベン」は国会議事堂の時計台として、イギリスで最も人気の高い観光スポット。

外国人旅行者であっても無料で内部を見られる上に白熱した議会の様子まで見学できるそうです。

そんなイギリスの宮殿に付随する「ビッグベン」に、ラザリディスは「罪の家」と名づけました。

写真を撮っている場合ではありません。

Banksy, Wall and Piece
出典:Banksy – Wall and Piece

バンクシーがあちこちに残した「This is not a photo opportunity」のステンシルで、観光客を揶揄すると同時に過剰なツーリズムに警笛を鳴らす姿勢は、2019年のベニスで行った路上パフォーマンスに受け継がれています。

⑤WILD STYLE CHASE

ワイルド・スタイル・チェイス

WILD STYLE CHASE, banksy captured by steve lazarides
出典:BANKSY CAPTURED BY STEVE LAZALIDES

この写真は、2000年代初頭にイングランド南部で撮影されました。
どういう訳か、囲いから放たれた牧羊犬がペイントされた牛に不快感を示して怒り狂いました。
私はこのショットが大好きです。

STEVE LAZALIDES

バンクシーは家畜のボディーがよほど気に入ったのか、多数の家畜にペイントをほどこしています。

田舎のヒップポップ

もし地下鉄がない町で育ったら他に何か絵を描くものを 見つけなければならないのさ。

Banksy, Wall and Piece

バンクシーは家畜にペイントしたこれらの写真を、2003年にオーストラリアのシドニーで参加したイベントでも展示しています。

Wild style !
領土問題
Fuck pigs(警官のスラング)
出典:全てBanksy – Wall and Piece

» バンクシー監督ドキュメンタリー作品”イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ(日本語字幕版)”はこちらです。

⑥BRIGHTON BURN OUT

焼け落ちたブライトン

BRIGHTON BURN OUT, banksy captured by steve lazarides
出典:BANKSY CAPTURED BY STEVE LAZALIDES

これはバンクシーのブライトンでの作品です。
桟橋が焼けて間もなくブライトンで撮影しました。
私は桟橋が好きです。
この桟橋を記録することができてラッキーでした。
ショーの本当のスターは、カモメだと思いますが!

STEVE LAZALIDES

ブライトンは、ロンドンから電車で1時間ほどのところにある海辺のリゾート。

写真の背景には、ウエスト・ピアと呼ばれるヴィクトリア時代の桟橋が作る絶景が見えます。

ウエスト・ピアは海に突き出た娯楽施設の廃墟でしたが、2003年の火災でフレームを残して完全に焼失。

ステンシルされた可愛い女の子は中国人のように見えますが、手に持っているソフトクリームには花火が点いているのでしょうか。意味深ですね。

こちらにはショーの主役、かもめは写っていませんが...

Brighton Beach, 2004
出典:Banksy – Wall and Piece

⑦DRUNKEN ANGEL

酔いどれ天使

DRUNKEN ANGEL, banksy captured by steve lazarides
出典:BANKSY CAPTURED BY STEVE LAZALIDES

2000年代初頭、バンクシーはこの作品をサザーク(ロンドンの地区)にドロップしました。

アートワークだけでなくポジションとライティングも、私にとってお気に入りのバンクシー作品の一枚です。 

「毎日この作品の前を通っていた夫が一年前に自殺した」という女性から連絡があり、作品に「慰められている」と言われたほろ苦い思い出があります。

STEVE LAZALIDES

出典:Banksy – Wall and Piece

⑧BLAIR’S FOLLY

ブレアの愚か者

BLAIR’S FOLLY, banksy captured by steve lazarides
出典:BANKSY CAPTURED BY STEVE LAZALIDES

2003年にロンドンで行われた反戦デモを撮影。

おそらくイギリス史上最大のデモです。
バンクシーは、プラカードの束を作り運の良い少数の人たちに渡しました。
これらのほとんどは、デモ行進が終わるとハイドパークに捨てられました。

STEVE LAZALIDES

バンクシーは2003年ロンドンの「イラク戦争に反対するデモ」のためにプラカードを作りましたが、路上に捨てられたり、警察に没収されたりして、オリジナルのものはほとんど残っていません。

バンクシーは、当時デモ行進に参加していたアーティストの友人や少数の人たちにこのダンボールを配りました。

その中には、マッシブアタックの3Dことロバート・デルナジャの姿もあります。

Robert Del Naja(Massive Attack) Damon Albarn (Blur2003)
出典:Massive Attack

anti-war demonstration, London 2003
Massive attack, Robert Del Naja
Robert Del Naja(Massive Attack)
出典:Massive Attack

ガラスの家に住んでいる人は石を投げてはならない。
ガラスの街に住んでいる人はミサイルを撃ってはならない。

反戦デモ、2003年ロンドン

Banksy, Wall and Piece

ロバート・デルナジャがプラカードを掲げて歩いているのがわかりますか? ヒントはサングラスです。

Banksy, anti-war demonstration, London 2003
2003年ロンドン、反戦デモ
出典:BANKSY CAPTURED BY STEVE LAZALIDES
Banksy, anti-war demonstration, London 2003
2003年ロンドン、反戦デモ
出典:Banksy And The Rise Of Outlaw Art
Banksy, anti-war demonstration, London 2003
2003年ロンドン、反戦デモ
出典:Banksy – Wall and Piece

» 【気軽に飾れる】バンクシーが手掛けたBlurのアルバム「Think Tank」はこちらです。

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⑨FUCK THE POLICE

ファック・ザ・ポリス

Banksy fuck the police by Steve Lazarides
出典:BANKSY CAPTURED BY STEVE LAZALIDES

2000年代初頭に西ロンドンでバンクシーのポートレートを撮影しました。
私の中では間違いなくトップ10に入っています。

STEVE LAZALIDES

⑩SPRAY IT LOUD

スプレー・イット・ラウド

SPRAY IT LOUD, banksy captured by steve lazarides
出典:BANKSY CAPTURED BY STEVE LAZALIDES

2000年代初頭にバンクシーのスタジオで撮影。

STEVE LAZALIDES

⑪BALLOON FIGHT

バルーン・ファイト

BALLOON FIGHT, banksy captured by steve lazarides
出典:BANKSY CAPTURED BY STEVE LAZALIDES

誰かがテキストの落書きをする数日前にバンクシーのこの作品を撮影しました。

フレームに足を踏み入れる勇敢な男が何かをつけ加えることで、アートワークがよりパワフルになるのを見るのは素晴らしいことです。

時がたつにつれて、この作品がますます多くの愛を集めているのを見ると、不思議な気持ちになります。

STEVE LAZALIDES

バンクシーは著書「Wall and Piece」で「赤い風船と少女」の作品にこんな言葉をそえています。

去る時は、騒がず静かに立ち去るんだ

Banksy, Wall and Piece
Southbank, London 2004
出典:Banksy – Wall and Piece

バンクシーは2018年にサザビーズのオークションで、のちにバンクシーの象徴となる「赤い風船と少女」を自ら仕掛けたシュレッダーで裁断しました。
2004年当時、どんな気持ちでこの作品を描いたのでしょうか。

本記事で使用したバンクシーの作品:

Wall and Piece – Banksy (2005)

Banksy Captured by Steve Lazarides (2019)

Banksy And The Rise Of Outlaw Art (2020)

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最後に

いかがでしたか? 

バンクシーの活動初期といえる2000年代前半の作品を、スティーブ・ラザリデスの「Banksy captured by Steve Lazarides」とバンクシー著「Wall and Piece」の二冊から抜粋して解説しました。

バンクシーの作品と、そこに添えられたキャッチーで皮肉のこめられた言葉を見ると、バンクシーは絵やステンシルだけではなくキャッチコピーと風刺の天才だということがあらためて分かりますね。

スティーブ・ラザリデスが写真に収めたバンクシーの「赤い風船と人形」の空飛ぶインスタレーションのように、バンクシーは活動初期から自分のメッセージをアートにのせて届けようと、人々の注目を集めることに熱心でした。

それは、今のバンクシーを作り上げた抜群のマーケティング力につながっているのかもしれません。

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【The World of Banksy】パリのバンクシー展はフェイクなのか【Paris】 https://paris-diary.com/the-world-of-banksy/ Fri, 17 Apr 2020 22:04:09 +0000 https://paris-diary.com/?p=2462 バンクシーをテーマにした展覧会が世界各地で行われています。

パリで2019年6月に始まったバンクシーの回顧展も例外ではなく、バンクシー本人の同意なしに開催されて、2020年12月末まで会期が延長されました。

バンクシーは無許可で行われる展覧会からいかなる利益も得ておらず、それらをやめさせることもできません。

本記事では、2019年6月からパリで開催されているバンクシーの展覧会「The World of Banksy」について検証します。

 パリのバンクシー展はフェイクなのか【The World of Banksy

the world of banksy paris exposition

バンクシーは今まで、その匿名性や奇想天外なエピソードでアートマーケットを挑発し、その限界を指摘し、既成概念を破壊し、時にはルールを再構築し、ストリートアートの基盤について再考しながら、著作権における芸術の曖昧さを浮き彫りにしてきました。

バンクシーの作品は常に傷つけられ、盗まれ、ブラックマーケットやオークション等では法外な値段で取引されます。

バンクシーの作品の多くは売却されて、すでに彼のものではありません。

今回は、パリのバンクシー展「The World of Banksy」で展示されているバンクシーの作品は本物なのか” について検証していきたいと思います。

» バンクシー本人による作品集”Wall and Piece”【日本語版】 はこちらです。

パリのバンクシー展とは【The World Of Banksy】

2019年の6月に、パリの古い地下駐車場をリノベーションしてできた展示スペース、エスパス・ラファイエット・ドゥルー「Espace Lafayette Drouot」が開催するバンクシーの展覧会「The World Of Banksy」は、2020年の12月まで会期を延長しました。

3フロア、1200 m2のスペースを占める「The World Of Banksy」は、プライベートコレクションから少なくとも50点以上の作品を展示し、壁にはバンクシーの最も有名なステンシル42作品をフィーチャーしています。

パリのバンクシー展の作品所有者は誰? 【The World of Banksy】

会場の所有者であり、イベント主催者のHazis Vardar氏は、笑顔で答えます…。

作品を提供している個人コレクターというのは誰ですか?

わかりません。
ヨーロッパ中にコレクションを巡回させている人たちから直接連絡がきました。

Hazis Vardar

彼らは投機家でしょうか?
また、どのようにして作品が本物であることを保証するのでしょう?

それはラコステを購入するようなもので、私たちが持っているのはだいたいブランドのオリジナルではなくコピー商品です。

バンクシーの最も有名なステンシルの1つ「赤い風船と少女」もありますが、署名もエディション番号もありません。

バンクシーについてとにかく真実はありません。
彼はキリストのような存在です。
私たちは、「キリストが水の上を歩いた」のが本当かどうか気にしていません。
重要なのは、ストーリーが伝えるメッセージの力です。

Hazis Vardar

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パリのバンクシー展の主催者は誰?【Hazis Vardar】

一部のピュリストとっては驚くほど短絡的なアイディアです。

しかし、アジ・バルダール(Hazis Vardar)のことをほとんど知らない人にとっても、さほど驚きはないでしょう。

兄弟2人でかつての伝説のクラブを劇場に改装した「ル・パラス」をはじめ、いくつかの劇場のオーナーを務めています。

このベルギー人兄弟は、ポピュラーなアプローチでパリのオファーを爆発させました。

演劇やメディアの世界では賛否両論があるものの、「The World of Banksy」は観客を見つけたようです。

ストリートアートに演劇の方程式を用いたアジ・バルダールは、特にバンクシーの人格が彼を喜ばせると言います。

両者とも、躊躇なく「芸術と消費社会」をミックスしている点が似ているのかもしれません。

【バンクシー展の様子】バンクシーの作品の中にいるという野望

banksy exposition paris 「the world of banksy」
出典:http://alexandraoury.com/

The World of Banksy」は、ストリートでしか伝えることができないバンクシーの作品メッセージをよりよく伝えるための「没入型の展覧会」です。
ストリートアートの反抗的で革命的な精神を守りたかったのです。
どこを見ても、何を聴いても、どこで振り向いても、あなたは作品の前ではなくバンクシーの中にいます。

Hazis Vardar

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フェイク

出典:Exposition “The World of Banksy”. (© Lise Lanot/Cheese)

「The World of Banksy」は、展覧会というよりはむしろ、没入型の体験であり、訪問者はグラフィティの世界に物理的に入り込むことができます。

レベル1では、バンクシーの主要な作品を見ることができます。

バンクシーの作品の多くは、すでに存在しない(世界中に散らばって、破壊されたり、市場に出回っていない)ため、「世界的に有名なストリート・アーティストでありながら、バンクシーが匿名である」ことを理由に、彼は展覧会で再現しようと思いつきました。

これらはバンクシーの絵画ではなく、訪問者のために提供されたバンクシーの最も有名なステンシルを模倣したコピーです。

ステンシルアートは、見かけほどほど簡単ではなく、作品のいくつかはとても粗い仕上がりになっています。

プロパガンダと皮肉あふれるステンシル

ベツレヘムの壁にロバと兵士が並んで立っていたり、バタクランの非常扉に涙を流す若い女性がたたずんでいたり。 

バンクシーによる42枚の壁画は、世界中の十数名のグラフィティアーティストによって原寸大で描かれています。

展覧会がはじまる地下スペースには、流用、プロパガンダ、皮肉など、バンクシーのスタイルをまとめた数々の美しい作品が展示されています。

照明を落とした空間演出が、場の雰囲気を醸し出します。

上階へ行くと、バンクシーがベツレヘムで成し遂げた作品を中心に、演出された空間を散策することができます。

バンクシーの有名な作品「花束を投げる暴徒」の等身大のレプリカ、または、彼が分離壁の側にオープンしたコンセプトホテル「Walled Off Hotel」の1室が再現されています。

独創的でとてもよくできていますが、すべてがフェイクなので、劇場のセットを横切るような感覚になります。

パリ、ニューヨーク、ベツレヘムのスペースを通り抜けると、バンクシーの祖国イギリスにささげられた最上階に到達します。

彼によると、この展覧会は「バンクシーが作品を描いた場所を訪問者が体感することができる」ヨーロッパで初めての挑戦だと言います。

ニューヨーク、ロンドン、パリ、そしてパレスチナ自治区からは弾圧を想起させるヘリコプターの音が聞こえてくるのです。

» バンクシー監督ドキュメンタリー作品”イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ(日本語字幕版)”はこちらです。

訪問者の心には何が残るのか

出典:Exposition “The World of Banksy”. Espace Lafayette Drouot

特に素晴らしい展示ではありませんが、コストパフォーマンスと品質のバランス(14 €) をのぞいて不愉快な点はありません。

アジス・バルダーは展覧会を通じて自らを先駆者と定義することで、今日認識されている「展覧会」という言葉と「アトラクション」という言葉の境界線について問いかけています。

「The Art of Banksy」は、バンクシーを知る入口として、または子供たちの夏休みのアクティビティーにはぴったりの展示かもしれません。

パリのバンクシー展の場所はどこ? 【The World of Banksy】

Espace Lafayette Drouot 所在地

【所在地】44 rue du Faubourg Montmartre, 75009

展覧会詳細【The World of Banksy】

Espace Lafayette Drouot【The World of Banksy】

曜日:火曜日から日曜日まで
開館時間:10h-18h
期間:2020年12月31日まで
電話: 01 82 83 28 55
web :https://www.espace-lafayette-drouot.com/project/
入場料:12-14 € (前売り券は2020年12月31日まで有効です)

※新型コロナウイルス感染症の影響により、展覧会の再開は5月11日以降に予定されています。
詳細についてはイベント運営者にお問い合わせください。

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【バンクシーのネズミ】ロックダウン中のバンクシーが自宅のトイレでネズミを発表【奥さんが嫌う】 https://paris-diary.com/banksys-rats-also-lockdown/ Wed, 15 Apr 2020 19:19:53 +0000 https://paris-diary.com/?p=3025 イギリスの覆面芸術家バンクシーが、最新作の「ネズミの絵」で覆われたバスルームの写真を自身のInstagramアカウントに投稿。

今回バンクシーがキャンバスに選んだのは、ストリートの壁ではなく「自宅のバスルーム」でした。

バンクシーは新型コロナのロックダウン中に自宅で仕事をすると「妻が嫌がる」とコメント。

新型コロナの影響でイギリス在住のバンクシーも自宅で奥さんとロックダウンしているようですね。

バンクシーが自宅のトイレに描いたネズミとは【奥さんが嫌う】

バンクシーがネズミの絵を自宅のトイレで公開

View this post on Instagram

. . My wife hates it when I work from home.

A post shared by Banksy (@banksy) on

描かれているのは、バンクシーの家のトイレで所狭しと戯れるネズミたちの姿。

さすがのバンクシーも、今回ばかりは早朝のストリートで仕事をするわけにいかず……

My wife hates it when I work from home.

家で仕事をすると僕の奥さんが嫌がってね。

Banksy, instagram

この言葉から、画像の場所が自宅であることを想像できます。

家のトイレを世界中のインスタグラムフォロワーにさらされることを、バンクシーの奥さんは嫌がっているのでしょうか、当然ですよね。(笑)

新型コロナの流行で、いつもはアウトローなバンクシーも家で仕事をしながら奥さんと過ごしているようです。

» バンクシー監督ドキュメンタリー作品”イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ(日本語字幕版)”はこちらです。

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バンクシーがトイレに描いたネズミ【作品詳細】

北斎漫画さながらの躍動感

覆面アーティストのバンクシーが、生活感あふれるキャプションとともに今回投稿した画像は全部で5枚。

【バンクシーのネズミ】ロックダウン中のバンクシーが自宅のトイレでネズミを発表【奥さんが嫌う】照明からぶら下がるネズミ
【バンクシーのネズミ】ロックダウン中のバンクシーが自宅のトイレでネズミを発表【奥さんが嫌う】歯磨き粉のチューブをふむネズミ
【バンクシーのネズミ】ロックダウン中のバンクシーが自宅のトイレでネズミを発表【奥さんが嫌う】トイレットロールの上を走るネズミr
【バンクシーのネズミ】ロックダウン中のバンクシーが自宅のトイレでネズミを発表【奥さんが嫌う】便器におしっこをかけるネズミ

5枚の写真の中には歯磨き粉を噴出させたり、バスルームの照明にぶら下がったり、鏡を片側に倒したりと、様々な行動をとるネズミたちの姿が描かれています。

あるネズミは、転がり落ちて床を横切るトイレットペーパーの上を走っています。便器には薄茶色の液体が付着した様子まで見事に再現。

さらによく観察すると、片隅には丁寧にネズミの巣まであるようです。中から覗いているのはネズミの仲間でしょうか?

【バンクシーのネズミ】ロックダウン中のバンクシーが自宅のトイレでネズミを発表【奥さんが嫌う】巣の中のネズミ


描かれたネズミたちはそれぞれが躍動感にあふれ、洗面台の鏡には赤い口紅でロックタウンの日数を集計するネズミの姿が映っています。

【バンクシーのネズミ】ロックダウン中のバンクシーが自宅のトイレでネズミを発表【奥さんが嫌う】口紅で二日数を数えるネズミ


その鏡はネズミたちの仕業で傾いている。

【バンクシーのネズミ】ロックダウン中のバンクシーが自宅のトイレでネズミを発表【奥さんが嫌う】肩車をするネズミ


上の方には「除菌ジェル」のようなものに手をかけるネズミもいます。

仲間を消毒しようとしているのでしょうか。

【バンクシーのネズミ】ロックダウン中のバンクシーが自宅のトイレでネズミを発表【奥さんが嫌う】上から除菌ジェルをかけるネズミ
【バンクシーのネズミ】ロックダウン中のバンクシーが自宅のトイレでネズミを発表【奥さんが嫌う】鏡の上のネズミ

擬人化されたネズミたちの姿は北斎漫画さながらですね。

葛飾北斎のネズミ『北斎漫画』十編より「家久連里」
出典:葛飾北斎『北斎漫画』十編より「家久連里」
北斎漫画入門 (文春新書)


それではもう一度、全体像を見てみましょう。

【バンクシーのネズミ】ロックダウン中のバンクシーが自宅のトイレでネズミを発表【奥さんが嫌う】全体像

全部で合計9匹のネズミが描かれています。なんだかにぎやかで癒されませんか。

ロックダウン中、狭いアパートで暮らすネズミの大家族といったところでしょうか。

散乱するトイレットペーパーは、「買い占めなんてしなくても、トイレットペーパーはいくらでもあるよ」と言いたいのかもしれません。

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バンクシーは結婚してるの?【奥さんは誰?】

今回の投稿で、バンクシーが結婚していることがわかりました。

マグカップには歯ブラシが二本入っており、奥さんと二人暮らしなのでしょうか。

イギリスのメディアによると、バンクシーの奥さんは労働党のロビー活動家「Joy Millward」(ジョイ・ミルワード)さんであると言われていますが真相は謎です。

「The Mail on Sunday」が、「バンクシーは2006年の一月にラスベガスで、当時31歳のジョイ・ミルワードさんと結婚した」と報じています。

記事によると、バンクシーがジョイ・ミルワードさんと出会ったのは2003年のロンドンで、ミルワードさんが労働党オースティンミッチェル議員のリサーチャーとして働き始める前のことでした。

彼女は現在も、2005年に立ち上げた慈善団体を支援する議会ロビー「Principle Affaires Limited」のキャンペーン・ディレクターに名をつらねています。

これ以上書くとワイドショーのようになってしまうので、バンクシーの奥さんの話題はこれくらいにしますね。

そしてもうひとつ、余談になりますが数年前に「バンクシーの娘」を自称する女の子が本を出版しました。

LETTERS TO BANKSY: FROM BANKSY’S DAUGHTER (English Edition)


この本が書かれたのはバンクシーが今ほど有名ではなかった2015年で、バンクシーがイスラエルでホテルをプロデュースしたり、オークションで作品をシュレッダーにかけたりするより以前のことです。

少女が主張する「自分の父親はバンクシーではないか」という憶測から、少女がバンクシーに向けて書いた手紙形式の本になっています。

憶測とはいっても全くありえない話でもなく、つたない英語でシンプルに綴られたこの本の評判はけっして悪くありません。

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最後に

バンクシーは「社会的な主張」をする手段としてネズミを用いており、ブリストルの通りの至るところに動物をステンシルすることで、世の中に出てきました。

そんなバンクシーは、ロンドン市内に大きなアトリエを構えていることが知られており、もしかしたら写真の場所はバンクシーのアトリエのトイレかもしれません。(バンクシーの真相は、謎につつまれていて本当のことは何も分かりません。)

新型コロナの影響でロックダウン中のバンクシーが家のトイレにネズミを描いたことで、ベールに包まれたバンクシーのプライベートがほんの少し明かされたような気持になったのは私だけでしょうか。

バンクシーも私たちと同じ、外出を制限された一人の市民なのでしょう。

いずれにしてもこの作品から、バンクシーが新型コロナウイルスを強く意識していることが伝わってきますね。

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【パリで盗まれたバンクシーのネズミ】犯人はバンクシーから指示されたと供述【バンクシーが否定】 https://paris-diary.com/banksy-denied-to-organise-theft-of-his-own-artwork/ Sun, 15 Mar 2020 13:05:44 +0000 https://paris-diary.com/?p=2075 ■2019年9月、パリのポンピドゥーセンター敷地内にバンクシーが描いた「カッターに乗るネズミ」のステンシルが盗まれました。 

■それから5ケ月後に起訴された男は、覆面アーティスト、バンクシー自身から犯行を指示されたと主張。

著名な覆面芸術家、バンクシーのステンシルが盗まれたのは2019年9月上旬のこと。

捜査の結果、32歳と35歳の容疑者を「バンクシーのネズミの窃盗容疑」で逮捕。

バンクシーは2018年6月、パリにあるヨーロッパ最大の現代美術館「ポンピドゥーセンター」の敷地にある駐車場パネルに、「覆面をしてカッターにまたがるネズミのステンシル」を描いていました。

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「バンクシーのネズミ」が盗まれた

https://www.instagram.com/p/Bk3Wm5knhOj/?igshid=1qc3h5o5kfmem

パリのポンピドゥーから消えた「バンクシーのネズミ」

2019年9月早朝、バンクシーの「カッターに乗ったネズミのステンシル」は、電動ノコギリでポンピドゥーセンター敷地内のパネルから切り離されました

それから5か月後、調査の結果2人の男を拘留。

2月4日火曜日の朝、32才と35才の男が逮捕された場所は、パリ郊外のヴァルドワーズとセーヌエマルヌでした。

男たちからバンクシーの作品が押収されましたが、それらがオリジナルかコピーかはわかっておらず、ポンピドゥーセンターの近くから盗まれた「バンクシーのネズミ」のパネルは見つかりませんでした。

2月7日金曜日、最終的に容疑者の1人を「ストリート・ファニーチャー(電柱・道路標識・ごみ箱など)における文化財の窃盗容疑」で起訴。

2018年9月、電動のこぎりでバンクシーのネズミを切り取る犯人の映像
▲早朝のパリで犯行に及ぶ容疑者の男を住民が撮影

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「バンクシーのネズミ」盗んだ容疑者の供述

ル・パリジャン紙によると、事件は容疑者が「バンクシー自身から盗難を依頼された」と謎の自白をしたことで別の展開を見せます。

34歳の容疑者は、「バンクシーと知り合いだが報酬は貰っていない」と供述。

男は、去年1月にバタクランの非常口に描かれた別のバンクシー作品が盗まれた後で、バンクシーからの指示が具体化したと主張しています。

しかし、この反論はすぐに覆されました。

バンクシーが事件への関与を完全否定

カッターにのるバンクシーのネズミ

バンクシーが「ル・パリジャン」紙にメールで反論

もし、バンクシーが電動ノコギリによる切断を実際に指示していた場合には(これはまだ証明されていません)、法律上、窃盗事件ではなくなります。

しかし、バンクシーは金曜日、フランスのメディア「ル・パリジャン」紙の編集部にメールを送り、「バンクシーの作品の盗難」への関与を完全に否定しました。

» バンクシー監督ドキュメンタリー作品”イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ(日本語字幕版)”はこちらです。

弁護士の主張と争点

現段階では、クライアント(容疑者)の起訴は立証されていません。
財産の所有者が、自分で(自分のものを)盗むことはできないからです。
容疑者はアーティストの要請で介入しました。

犯罪者はいません。

容疑者の弁護士

その後、容疑者の弁護士の弁明により司法審査を通して容疑者釈放。

調査は続きますが、バンクシーは自分の作品が盗まれたことを訴えておらず、法廷にも現れないため事件の解決は困難を伴います。

ポンピドゥーセンターは「バンクシーのネズミ」の作者ではなく、切断された「パネルの損傷」にのみ苦情を申し立てる権利があります。

ポンピドゥーの運営陣は 「パネルを修理するために苦情を申し立てる」として争う姿勢。

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【著作権は敗者のためのもの】by バンクシー

 【著作権は敗者のためのもの】by バンクシー

著作権は敗者のためのものである
Copyright is for losers

Banksy

バンクシーは本当に作品を取り戻そうとしたの?

バンクシーがストリートに描いた自分の作品を独占する権利を主張したことは、今まで一度もありません。

バンクシーは、本当に作品を回収しようとしたのでしょうか?

これは芸術的パフォーマンスなのか、それとも作品を保存したいというシンプルな願望なのでしょうか?

最後に

実はこのネズミ、2018年7月にも盗難未遂にあい、巡回中の警備員が間一髪のところで救っています。

「バンクシーから盗難を指示された」だなんて、今回ばかりはバンクシーが姿を現さないのを良いことに逃げたようですね。

おそらくは、転売目的の犯人、または熱狂的なコレクターによる盗難でしよう。

例えばこれが、「一部始終を誰かに撮影させてバンクシーがドキュメンタリーとして発表」、なんていうことも考えられなくはないですが、その可能性はちょっと低いですよね。

バンクシーが自分でストリートに残したステンシル作品に執着を持つということは考えられません。

もちろんバンクシー自身、「自分は関与していない」と公式に反論してますが、覆面芸術家ゆえ、法廷で顔をさらして証言することはないでしょうね。

いずれにしても、バンクシーがパリのポンピドゥーのパネルに描いた「カッターに乗るネズミのステンシル」は見つかっていないのです。

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【Banksy】新作に落書きされて喜ぶバンクシーの本音とは https://paris-diary.com/banksys-latest-artwork-vandalized-after-just-two-days/ Mon, 09 Mar 2020 00:25:53 +0000 https://paris-diary.com/?p=1850 英ブリストルのバートンヒルに現れたバンクシーの最新作は、わずか48時間で落書きされてしまいました。

にもかかわらず、バンクシーはバレンタインデーの壁画が破壊されたことを楽しんでいるようです。

せっかく描いたステンシルが汚されて嬉しいだなんて、バンクシーはいったいどういう心境なのでしょうか?

バンクシーが落書きをされて喜んだのはなぜ?

英ブリストルで落書きされたバンクシーの壁画
出典: Ben Birchall/PA Images via Getty Images

2月14日、バンクシーが地元英ブリストルのバートンヒルにある住宅の壁に、バレンタインデーに向けた壁画を発表。

その2日後、何者かにより上から落書きされました。

パチンコから赤い花を放つ少女をフィーチャーしたこの作品は、2月13日にブリストルの住宅の壁に現れたもので、バンクシーはバレンタインデー当日の深夜にInstagramで写真を投稿、自身の作品であることを承認しました 。

» 詳しくはこちらの記事で解説しています。
【Banksy】バンクシーがバレンタインデーに新作【パチンコで遊ぶ少女と赤い花】を発表

作品を保護するために設置されたアクリルパネルは引き離されており、バンクシーのステンシルが 心ない落書きで直接汚されています。

それを知ったバンクシーは、Instagram上に「なんだか嬉しい」というコメントをつけて、新たに3点のスケッチを追加しました。

せっかく描いたステンシルが汚されて嬉しいだなんて、バンクシーはいったいどういう心境なのでしょうか?

バンクシーがオリジナルスケッチを公開

バートンヒルの作品が汚されてなんか嬉しい。
最初のスケッチのほうがずっと良かったからね。

Banksy, Instagram

理由は簡単。バンクシー曰く「最初のスケッチのほうがずっと良かったから」でした。

それだけでなく、バンクシーは2018年に自分の作品をオークション会場で細断して破壊してしたり、もっと以前には他のアーティストがストリートに描いたグラフィティを塗りつぶして自分のステンシルを上書してバトルになった過去があります。

そのせいか、バンクシーが作品への荒らし行為に怒りをあらわしたり、取り乱すことはほとんどありません。

英ブリストルのバートンヒルで見つかったバンクシー作パチンコを放つ少女の下絵①
英ブリストルのバートンヒルで見つかったバンクシー作パチンコを放つ少女の下絵②
英ブリストルのバートンヒルで見つかったバンクシー作パチンコを放つ少女の下絵③
出典:Banksy, Instagram

改めてオリジナルスケッチを見ると、バートンヒルのステンシルは、バンクシーの代表作《 フラワースロウワー》の女の子バージョンだとわかりますね。

バンクシーの代表作《フラワースロウワー》とバートンヒルのステンシル画比較


落書きされたのは始めてではなかった

しかし、バンクシーの壁画が汚されたのは今回が初めてではありませんでした。

去年のクリスマスにバンクシーが、バーミンガムで描いたトナカイのステンシルを覚えていますか?

ホームレスの男性に差し入れをする通行人とのほろ苦いショートムービーが、バンクシーのInstagramに投稿されるやいなや、自称ファンでストリートアーティストを名乗る“Hers” という人物があらわれて、トナカイのステンシルに赤い鼻を付け加えたのです。

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【Banksy】バンクシーが英国総選挙に先立ちトナカイとホームレスのクリスマス作品を発表

また、2018年にパリの18区で見つかったステンシルは、ナチスのシンボル卍が見えなくなるまで塗りつぶされていますが、作品自体は今現在も元の場所で保護されています。

ナチスのシンボル卍が見えなくなるまで塗りつぶされたパリのバンクシー壁画
バンクシー公式画像(右)と筆者撮影画像(左)の比較
2018年パリ18区

その他、バンクシー初期の作品の1つ、2001年にブリストルソーシャルクラブの壁に描かれた《 ピンク色の仮面をつけたゴリラ》(Banksy,Gorilla in a Pink Mask, 2001,Bristol)と、サウサンプトンの壁に描かれた《ノーフューチャー》(Banksy,No Future, 2010, Southampton)も塗りつぶされてしまいました。

バンクシー初期の作品の1つ、2001年にブリストルソーシャルクラブの壁に描かれたピンク色の仮面をつけたゴリラ
出典:Daily Mail


前者ブリストルソーシャルクラブの壁画は2011年にバンクシーの作品である事を知らずに誤って塗りつぶされたのち、修復されてうっすらとゴリラの面影が浮かび上がって見えます。

バートンヒルの女の子の壁画からわずか2,5 kmほどの場所でした。

そして後者、ちょっと不機嫌そうな表情の女の子が風船を持ったステンシル《ノーフューチャー》は、故意に塗りつぶされてめちゃくちゃな状態です。

落書きされたバンクシーの壁画《ノーフューチャー》

↓これが本来の落書きの姿なのかもしれませんが、残念ですよね。


壁の中央下あたりに、風船をもつ女の子の姿がうっすらとみえるでしょうか?

拡大すると分かりやすいかもしれません。

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【Banksy Paris】パリでバンクシーのネズミが盗まれた【ポンピドゥーで衝撃映像】

落書きされたバンクシーの壁画は誰のもの?

落書きされたバンクシーの壁画は誰のもの?

バートンヒルの住民とコミュニティの反応

バレンタインデーの壁画は、バンクシーが数年ぶりにブリストルで完成させた作品の1つでした。

住民の一部は、バンクシーが放置されたコミュニティにスポットライトを当てようとしたのだと推測。

作品が汚されてがっかりしているのはバンクシーよりむしろ、バートンヒルの住民たちでした。

ステンシルが描かれた家の居住者ケリー・ウッドラフさんは、作品が現れたとき「信じられないほど美しい」と言い、週末にせまった暴風雨から作品を保護しようとしました。

バンクシーの作品は多くの訪問者を集めており、ケリー・ウッドラフさん によるとアートワークの一部として道路標識に置かれていた花もすでになくなっていたと言います。

また、家族みなが途方にくれており、壁画をさらなる被害から守るための対策を講じていると語りました。

長期的な解決策が導入される前に、保護ボックスやセキュリティフェンスなどの一時的な対策がなされるとのこと。

ウッドラフさんは「とても悲しい。彼らは皆から喜びを奪いました。私たちはこの作品を長い間、できるだけ多くの人に見て楽しんでもらいたいと思っています。」

「本当に残念ですが、不幸にもこのようなことはいつ起こってもおかしくありませんでした。」

バートンヒルに拠点を置く英国ソマリアコミュニティ協会は、破壊行為は「衝撃的」であり、「悲惨な状況を見るのは悲しい」とツイート。

バンクシーの壁画は誰のもの?

英国の法律では落書きが不動産などの壁に描かれている場合、「芸術」の物理的な部分はプロパティーの所有者に属し、その所有者はそれを合法的に保護、または消すことを選択できます。

今回のバレンタインの壁画のように、不動産が賃貸に出されている場合、落書きはその建物の外観の一部として、居住者ではなく所有者に属します。

ただし、アートワークに対する無形の権利(著作権)への所有権は、アーティストであるバンクシーに帰属。

しかし、所有権は長年紛争の対象となってきました。

2012年、Slave Laborというバンクシーの壁画がWood Green Investmentsが所有する物件に描かれて、後に取り外されてオークションで販売されました。

すると、バンクシーの壁画をコミュニティの財産であると考えた地元住民による抗議が起こりました。

ここで、法律は再び明確になります。

アーティストの意図に関係なく(バンクシーが投資会社に壁画を贈ろうとした可能性は低い)、壁画は不動産の所有者のものであることが明確化されました。

バンクシーのアートワークは、それ自体が器物損壊罪にあたるため、被害を問えるのかどうか疑問の余地がありますが、アートワークの結果として価値が高まった壁が、破壊行為によって損傷を受けたのは確かです。

所有権の問題は、今後、ストリートにさらに多くのバンクシー作品が現れるにつれて、そして土地の性質(土地のままであるか、個人的、および知的財産になるか)が争点となり、今後しばらくの間、不動産弁護士を熱狂させて激しく争われるでしょう。

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【盗まれたバンクシーのネズミ】犯人はバンクシーから指示されたと供述【バンクシーが否定】

まとめ

今回の件で、バンクシーの貴重な直筆の下絵を見ることができ、内心うれしく感じている人もいるのではないでしょうか。

実際に作品の損傷はそこまで激しくはなく、ピンクのハートはポップでかわいらしく、全体像を見るとよりいっそうグラフィティーらしくなった気がしないでもありません。

そして、バレンタインデーに一度注目を集めたバンクシーのステンシルが、上から落書きをされたことによって世界で二度注目されました。

もちろん、芸術性の高いバンクシーの作品の上から、直接落書きをするなんて残念なことをするのは絶対にやめて欲しいと思います。

でも、これがストリートでこそ生きる、ストリートアートの宿命ではないでしょうか…。

もしかしたらバンクシー自身も、ステンシルが額に入れられてリビングに飾られるよりも、ストリートで生きることを望んでいるのかもしれません。

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