2019年7月、正体不明のグラフィティアーティスト、バンクシーの “忘れられた”テレビインタビューが、ITVニュースの保管庫から発見されました。
長い間謎とされてきたバンクシーの顔が分かる唯一のポートレートと、バンクシー自らカメラの前に登場した貴重な映像をご覧ください。
» ランキングに参加しています。よろしければクリックをお願いします。↓
Contents
【バンクシーの顔】この人がBanksy?【バンクシーの顔が分かる唯一のポートレートとインタビュー】

バンクシーの忘れられたインタビューとは【Banksy Rare Interview from2003】
イギリスのメディア「ITV London Tonight」のレポートは、2003年にバンクシーがロンドンで開催した展覧会「ターフ・ウォー」の前に撮影されたもので、バンクシーが壁に黒い昆虫をステンシルしたり、


「KILL MORE」(もっと殺せ)と書かれたブロックで遊ぶ赤ちゃんの絵を描いたりする姿を見ることができます。
イギリスのメディア「ITV London Tonight」のリポーター、ハイグ・ゴードンによる2分間のレポートでは「バンクシー」とされるアーティストが35秒程話をしています。
これは、バンクシーが自発的にカメラに映った唯一の映像の一つです。
バンクシーとされる人物は、野球帽をかぶり、Tシャツを目の下まで引っ張って顔を隠していますがが、目や眉、額がはっきりと見えます。

当時、バンクシーは28歳でした。
グラフィティライターは、素性をさらすわけにはいかないので変装しています。この2つを両立することはできません。
Banksy 2003,ITV
バンクシーの顔が分かる唯一のポートレート
バンクシーの元エージェントでフォトグラファー、スティーブ・ラザリディスが出版したバンクシーの写真集「Banksy Captured」には、この人物にとても良く似たバンクシーの姿が収められています。


スティーブ・ラザリディスの写真集は修正されており、バンクシーの顔は分からなくなっていますが、目元がはっきりと写ったオリジナル写真がこちらです。

2000年:スティーブ・ラザリディス
ITVのインタビューに答えるバンクシーと、髪の色や眉の形がとても良く似ています。
この写真はスティーブ・ラザリディスが撮影し、2000年に「The Observer」に掲載されたものです。ブリストルのEaston Roadにある「Redcliffe Imaging」の古い建物の前で、作品を前にしたバンクシーの姿が写っています。
ラザリディスの写真集とは文字の位置が少し違いますが、バンクシーが着ている服や帽子、ネズミやメタル部分の傷、さびなどが完全に一致します。

バンクシーの背景に見えるネズミのステンシルが、バンクシーの著書「Wall and Piece」に掲載されているバンクシーの作品であることに間違いはありません。
このポートレートは、バンクシー自身がオーストラリアのシドニーのイベントで展示していることから、本人も気に入っていた可能性があります。
正真正銘の本物、バンクシーが2003年4月にシドニーで展示したバンクシーの顔の半分が写ったポートレートなのです。


2つの画像を並べてみました。

透過して重ねると、2つの画像は文字以外の部分が完全に一致します。
では、なぜ文字の位置が違うのでしょう?
答えは...
画像にフィルターをかけて拡大すると

どちらの文字もステンシルではなく、文字部分だけ合成されていることがわかりました。
ということで、どちらも本物のバンクシーの写真です。
バンクシーのもう一つの貴重なインタビュー【Banksy Rare Interview from ‘95】
2003年にITVが撮影したインタビュー映像のバンクシーの声は、2000年にイギリスのBBCチャンネル4のドキュメンタリー・シリーズ「Shadow People」で放映されたバンクシーのインタビューの声とほぼ完全に一致します。このことは、【バンクシーの作品解説11選】スティーブ・ラザリディスによるバンクシーの写真【Banksy Captured】の中ですでにお伝えしています。
以上のことから、「ターフウォー」で行われたバンクシーのインタビュー映像に映るバンクシーとされる人物は、バンクシー本人である可能性が極めて高いと言えるでしょう。
» バンクシー監督ドキュメンタリー”イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ(日本語字幕版)”はこちらです。
» 合わせて読みたい
インタビューのアーカイブを偶然発見
「ターフ・ウォー」でのクリップを発見したのは、ITVウエストカントリーのロバート・マーフィーで、彼は他のバンクシーの映像を探していたところ、「インタビュー・ウィズ・バンクシー」というカタログが登録されたライブラリーのリストを見つけて驚いたと言います。
もしこれがバンクシーの映像なら、正体不明のステンシルアーティスト、バンクシーがメインストリームのテレビクルーのインタビューを受けた唯一の機会かもしれません。
バンクシーの姿を見たインタビュアーが語るバンクシーとは
ロバートはその後、バンクシーにインタビューをしたハイグに連絡を取りました。ハイグ は16年前にロンドン北東部のダルストンでバンクシーにインタビューしたことを忘れていました。
ハイグは「彼(バンクシー)のどんな姿にも大きな価値がある、だけど不思議なことに思い出せない!」と言います。
バンクシーの顔を見たよ。
ハイグ・ゴードン
問題は、彼がどんな顔だったか思い出せないことです。
インタビューは、2003年7月に開催されたバンクシーの展覧会「ターフ・ウォー」の前に撮影されました。彼はこう付け加えます。
バンクシーの見た目については、何も言うことができません。 ひどいでしょう?
彼はリラックスしていて、のんびりしていて、愛想が良かった。私は彼のことが大好きだった。彼は、芸術家気取りではなくとても感じが良かった。
カメラが回る直前に私がジョークを言ったら、バンクシーはとても良い反応をしてくれました。私が『バンクシー、インタビュー中にそれ(Tシャツ)を取ったらどうするのかな』と言うと、彼は笑ってくれた。彼は私が本気ではないことを知っていました。
私たちはバンクシーが変装せずに作業する映像を撮り、変装せずに会話しました。
バンクシーの展覧会「ターフ・ウォー」【2003年ロンドン】

2003年7月18日から3日間の間、ロンドン東部の廃墟となったガレージで開催されたバンクシーの展覧会「ターフ・ウォー」は、バンクシーがオフビートで破壊的、そのユーモラスなアートにより世界的な評価を得るきっかけとなりました。

バンクシーは、農場の生きた動物にペイントし、羊の体にシマウマ模様を描き、牛には矢印マークを、豚には青いカラーリングをステンシルしました。



バンクシーは当時、その理由をこう語っています。
楽しい絵を描くのは難しいけど、
Banksy 2003, ITV
少なくとも目の前でうろうろしたり鼻を舐めたり小便をしたりする何かがいれば、
絵が少し面白くなります。
また、ターフ・ウォーの展覧会の2日前にネルソン記念塔 (Nelson’s Column)に “指定暴動エリア “(Designated Riot Area)とスプレーしたことについて聞かれると、
「あれはかなり面白いと思った 。」と答えています。

バンクシーは一人なのか
「バンクシーはグループではないか」とか考える人もいるようですが、バンクシーは一人です。
それは、バンクシーやスティーブ・ラザリディスが今までに出版した著書やドキュメンタリーを見ると分かります。
バンクシーと共に働き、共同作業を行い、バンクシーのメンバーだと考えられているアーティストたちは身元を明かしており、バンクシーの共同作業者として様々なインタビューに答えています。
» スティーブ・ラザリデス出演ドキュメンタリー映画【Banksy And The Rise Of Outlaw Art】(2020年)はこちらです。
最後に
私は時々、匿名で人生を生きるのはどんな気持ちだろうかと考えます。
リチャード・ジョーンズ、Tangent books
自分のアイデンティティを幾重にもにもわたって隠していくのは、とても奇妙なことでしょう。
バンクシーの匿名性は長い間謎の源となっており、バンクシーが自らカメラの前に登場した事はないと考えられてきました。
バンクシーが監督した映画『Exit Through The Giftshop』では、バンクシーはフードを被ったシルエットとして撮影され、声もひずませています。
現在、世界で最も有名なアーティストでありながら、ごく一部の人々を除いて誰も彼の正体を知らないということについて、バンクシー本人はどのように感じているのでしょう?
「バンクシー 正体」で検索すると、多くはブロガーが書いたフェイク記事です。しかし、フェイク記事を残しておくことは、結果的にバンクシーの活動に都合の良いアイデンティティーを守るための唯一の方法といえるかもしれません。
いずれにしても、バンクシーの絵を見る人にとって「バンクシーの顔」や名前、正体が誰であるかは、ほぼどうでも良いことなのですから…。
» バンクシー本人による作品集”Wall and Piece”【日本語版】 はこちらです。